2009年12月31日木曜日

●週刊俳句2010年回顧

週刊俳句2010年回顧

一月

10句作品の掲載のないまま一月が終わり、「週刊俳句、方針転換か」と一部居酒屋(さくら水産)で話題になる。原因は、運営4名が公私でバタバタしており句稿依頼を失念していたため。

二月

第3回週刊俳句賞開催。受賞は謎のネット俳人。受賞後、連絡が取れず、行方は杳として知れず。

三月

40歳代を中心とした新同人が、オタクと俳句の融合=「オタイク」を掲げ、まるごとプロデュース。アクセスが瞬間的に通常の50倍を記録。

四月

週俳3周年オフ会、小石川後楽園で開催。「和民」での二次会に始まり、酒宴は五次会に及び、記録更新(なんの?)。

五月

四週連続で「サバービア音楽」特集。俳句の話題がいっさいなく、俳句ファンの足が急速に遠のく。

六月

誌面の立て直しに、運営スタッフを募り、20人体制で再スタートするも、なんだかややこしくて、かえって非効率。4人体制に戻る。

七月

週俳主催の鍛錬句会「真夏のハワイ」が企画されるも、応募が定員割れ。中止に。

八月

俳句甲子園をツイッター生中継。判定・投票もツイッターで多数寄せられ、「審査員、おかしいやんけ」と関西方面から怒号と抗議。

九月

アップされた記事すべて化け字に。「ぜったいに祟りだ」「いったい何の?」と一部居酒屋(土間土間)で話題に。google blogger の不具合と判明。

十月

名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に合わせ、「エコ俳句」特集。冒頭記事「紙のムダをなくそう」に、全国の結社誌・同人誌から非難のコメントが殺到。

十一月

某俳句総合誌よりウェブサイト「週刊俳句」にM&Aの申し入れ。買収金額20,000円。「4人で分ければ5,000円ずつになる」と売却賛成2名、「ううむ。それでいいのか」と反対2名で、決議とならず。週俳売却問題を読者アンケートに図るも「どっちでもいい」が大多数を占め、決着つかず。問題解決は越年へ。

十二月

昨年の『新撰21』に続く「00年代の新人たち」シリーズ第2弾『超・新撰21』刊行に合わせた企画が目白押し。なお刊行直後、1名に「年齢詐称疑惑」が持ち上がり、週俳誌上でも議論沸騰。


(さいばら天気) inspired by tomoaki okamura :thanx

●大晦日

大晦日


大晦日定めなき世の定め哉  井原西鶴

大晦日ねむたくなればねむりけり  日野草城

神戸美し除夜の汽笛の鳴り交ふとき  後藤比奈夫

家の中を水ながれ過ぐ大晦日  穴井太

ともしびを消せば聞こゆる除夜の鐘  岩田由美

又一つ風の中より除夜の鐘  岸本尚毅

足がまた二階へ上る大晦日  辻田克巳


【評判録】新撰21 〔続〕

【評判録】新撰21 〔続〕    ≫承前Ⅰ ≫承前Ⅱ ≫承前Ⅲ

http://en.wordpress.com/tag/todays-haiku/  2009-12-23 以降
:Today's Haiku:Blue Willow Haiku World (by Fay Aoyagi)

一日一句 「討ち入りの日のストローを折り曲げる」:Pu&Fuの研究室だより

『新撰21』:旧時雨舎より
『新撰21』その2



『新撰21 21世紀に出現した21人の新人たち』
筑紫磐井・対馬康子・高山れおな(編)・邑書林

購入は邑書林ホームページ

2009年12月30日水曜日

■週刊俳句へのアクセス分布

週刊俳句へのアクセス分布


今後の重点地域は、北海道・東部および北部ですね。ざっと見て、週俳は北日本に弱い。

2009年12月29日火曜日

■金子兜太講演「生きもの諷詠」

金子兜太講演「生きもの諷詠」

『現代俳句』2010年1月号に、第46回現代俳句協会全国大会における金子兜太講演「生きもの諷詠」講演録が掲載されています。

2009年12月28日月曜日

〔link〕昭和50年代の新人たち

〔link〕昭和50年代の新人たち

葬送と若書き―「消費時代の詩」(豈49号)補遺:外山一機 Haiku New Generation

2009年12月26日土曜日

〔俳誌拝読〕雷魚 80号


〔俳誌拝読〕
雷魚 80号 2009年10月







小宅容義発行。隔月刊。本文50頁。「雷魚の会」創設は1987年(後記=小宅容義による)。

巻頭近くに亀田虎童子『色鳥』(2008年)特集。岡本高明(「あるがまま」)、寺澤一雄(「平明とは」)両氏の句集評をはじめ、同人諸氏による一句観賞が並ぶ。
「雷魚」は芸達者が集まって、二十年前に創刊された同人誌であるが、芸達者のなかでも抜きん出ていた虎童子が八十歳を過ぎ、病を得ながら求めて止まない俳句の世界が平明さというのは、共感できるところである。芸を消す芸を使いながら到達する俳句の世界から今後も眼が離せない。(寺澤一雄・前掲)

広辞苑より重たき春の猫  虎童子(以下同)

鯛焼やひと足ごとに日の暮れし

叩かねば落ちる紙風船たたく

蟻はみな同じ大きさ列をなす

筆書きの賀状の籤の当りたる



同人諸氏10句から1句ずつを引く。

枇杷の実を降りつつむ雨つたふ雨  中村与謝男

水槽に稚魚つぎつぎと業平忌  鍋谷ひさの

茄子の馬夕日しつらへ駈け出しぬ  八田木枯

ぼうたんの金の蕊より金の虻  平佐悦子

真昼間の首塚という涼しさよ  細根 栞

白雨きたりて縞馬を裏返す  増田陽一

走り茶と赤福餅のうねりかな  松下道臣

鉄塔の螺子しめなおし秋の暮  三橋孝子

夜の秋艇庫の口の開いてゐる  宮路久子

花菖蒲余白に水の滲みいる  森 章

秋風のうわすべりして猿ヶ島  遊佐光子

噴水に集まっている日暮かな  好井由江

桃色とならねば桃と思はれず  阿部寒林

噴水は水をむすびてあきらめず  上田多津子

家一つかくすばかりに吊し柿  衣斐ちづ子

青山河じぶんの肘の見えにくく  太田うさぎ

雲の峰いやしき口もおとろへし  岡本高明

走り出す抜け羽だまりの羽抜鶏  小宅容義

たんぽぽのととのふ絮のとぶ日なり  笠川輝子

ボンネットバスの終点ほととぎす  勝又民樹

遠雷や土偶の口のぽかんぽかん  神山 宏

脳天といふに気づける溽暑かな  亀田虎童子

仏壇にきのふの蠅とけふの蠅  加茂達彌

ひまわりの直立おじいさんがいる  北上正枝

傘置けばたちまり山の蟻が来る  栗田希代子

巴里祭や古い雑誌に紐かけて  小島良子

住み馴れの富士山帯草を引く  小林幹彦

人と影足でつながり夏深む  櫻井ゆか

体ごといつか出てゆく木下闇  櫻木理子

くらがりの一樹にのぼる盆太鼓  鈴木夏子

寺の木のとんとん乾く夏うぐいす  関戸美智子

皆既日食袋の中の蟹うごく  蘓原三代

鰯てふ文字の何ぞ骨多き  竹内弘子

東京は上野で終りひきがえる  寺澤一雄

地震多き国にて花鳥諷詠す  遠山陽子


(さいばら天気)

2009年12月25日金曜日

■新年詠 大募集

新年詠 大募集

新年詠をお寄せください。

●おひとりさま 一句
  ※簡単なプロフィールを添えてください。

●投句期間
1)2010年1月1日零時~1月2日(土)正午 ⇒第141号(1月3日号)に掲載
2)~2010年1月8日(金) ⇒第142号(1月10日号)に掲載

●投句先メールアドレス ⇒こちら (サイドバー「ご連絡・お問い合わせ先」)

●「新撰21」竟宴・非公式レポート

「新撰21」竟宴・非公式レポート

http://twitter.com/saibaratenki
※ツイッターは下ほど過去。次のページにも「つぶやき」があります。

2009年12月24日木曜日

●クリスマス

クリスマス




聖樹の灯わがまばたけばともにまた  加倉井秋を

地に悪しき父ゐて聖夜さ迷へり  堀井春一郎

尻さむし街は勝手にクリスマス  仙田洋子

定食で生きる男のクリスマス  中嶋いづる

ウラハイ・2008年のクリスマス

2009年12月23日水曜日

●合コン

合コン

【評判録】新撰21 〔続〕

【評判録】新撰21 〔続〕    ≫承前Ⅰ ≫承前Ⅱ

『新撰21』短評:曾呂利亭雑記


『新撰21 21世紀に出現した21人の新人たち』
筑紫磐井・対馬康子・高山れおな(編)・邑書林

購入は邑書林ホームページ

2009年12月22日火曜日

〔link〕俳句とインターネット

〔link〕俳句とインターネット

第一回ウェブ学会シンポジウム:ono deluxe(小野裕三)
インターネット時代の俳句-座の変容(五十嵐秀彦)

本誌「週刊俳句」・現代俳句協会青年部勉強会「俳人とインターネット」 レポート(さいばら天気)
前篇  ≫後篇

■熊楠俳句賞創設


熊楠俳句賞創設

和歌山放送ニュース 2009年12月21日(月) 11:32
12月29日は南方熊楠の亡くなった日。南方熊楠は、1941年 昭和16年12月29日、「天井に紫の花が咲いている」と云う言葉を残して74歳で亡くなりました。白浜町臨海の南方熊楠記念館は、俳句の冬の季語「熊楠忌」にちなんで、熊楠に関わる俳句の「熊楠俳句賞」を創設して、はがきやメールで作品を募集しています。応募は1人3句までで、はがきなら 郵便番号649・2211 白浜町360の1 南方熊楠記念館。 メールでも受け付けており、しめ切りは31日です。記念館ではこれまで、来館者に俳句を募っていましたが、今回から大勢に参加してもらおうと全国に応募を呼びかけています。熊楠の俳句は、県内各地の熊楠の訪れたところで紹介されていますが、日高川町の猪谷川(いたにがわ)公園には「苔の下に 埋もれるものや 蟹の甲」という句碑もあります。

2009年12月21日月曜日

●字余り

字余り

2009年12月18日金曜日

【評判録】金子兜太『日常』

【評判録】金子兜太句集『日常』

2009年6月・ふらんす堂

金子兜太『日常』:ono deluxe
Archives for posts tagged 金子兜太:俳句的転回

2009年12月17日木曜日

〔祐天寺写真館39〕罅と草

〔祐天寺写真館39〕
罅と草

長谷川裕

ぺんぺん草にぬくもって石ころ


09年06月 中目黒 Nikon D300

〔link〕亀田虎童子

〔link〕亀田虎童子

隙間:Rocket Garden~露結の庭
:掲示板(俳句 de しりとり)

2009年12月16日水曜日

【評判録】小川春休『銀の泡』(続)

【評判録】
小川春休句集『銀の泡』(続)

2009年10月・タカトープリントメディア

:ono deluxe
2009年11月13日(金):ogihara com
2009年11月10日:増殖する俳句歳時記

前・評判録

2009年12月15日火曜日

●海鼠

海鼠

浮け海鼠佛法流布の世なるぞよ  小林一茶

むかし男なまこの様におはしけむ  大江丸

混沌をかりに名づけて海鼠かな  正岡子規

安々と海鼠の如き子を産めり  夏目漱石

海鼠噛むそれより昏き眼して  中村苑子

海鼠には銀河の亡ぶ音聞こゆ  高野ムツオ

海鼠かむひかりの粒を噛むごとく  小檜山繁子

鉄を嗅ぐごとく海鼠に屈みたる  正木ゆう子


2009年12月12日土曜日

●長谷川 裕 仲良し手帖 10句

俳諧スピーチバルーン・シリーズ02
長谷川 裕 仲良し手帖


仲良し手帖
ヒロポンを飲んでゲラゲラお正月

ペスよおをふれ
短夜のスピッツ バターを舐めるのか

リボンの騎士
春は憂しおのこもすなるブルーマー

星くずさん
ブス・田舎・女中奉公・星月夜

フイチンさん
冬すみれ没法子とは云ひませぬ

まりっぺ先生
サンダルとりんごのやうなほっぺかな

おてんば天使
父の日の父が遭難オロロン島

少女マリ
東京へ兄いっちっち花の午

ひみつのアッコちゃん
鏡より萌えるものありクリスマス

赤んぼ少女
蓮根掘るもんぺのタマミ蓮根掘る



 

〔link〕俳句の未来人

〔link〕俳句の未来人

豈49号特集「俳句の未来人は」を読む ~相対性俳句論(断片):たじま屋のぶろぐ

≫本誌「週刊俳句」・『俳句空間−豈』第49号・特集「俳句の未来人は」を読む ピリオドの描き方(さいばら天気)

2009年12月11日金曜日

■第13回毎日俳句大賞

第13回毎日俳句大賞

大賞
大阿蘇の山懐へ帰省かな 隗一骨さん(68)=横浜市戸塚区

http://mainichi.jp/enta/art/news/20091209ddm010040118000c.html

2009年12月10日木曜日

〔祐天寺写真館38〕彼岸花

〔祐天寺写真館38〕
彼岸花

長谷川裕

幻聴の一夜一把の黒するめ


09年09月 上目黒 RICOH GRD

2009年12月9日水曜日

〔俳誌拝読〕なんぢや 7号

〔俳誌拝読〕
なんぢや 7号 2009年冬


2009年11月27日発行・本文36頁。榎本享(みち)氏(発行人)をはじめとする8氏による同人誌。この7号では波多野爽波特集が組まれた。

  爽波亡き日々をどれだけ夜這星  西野文代(「招待席」5句・p2より)

鈴木不意「自選十五句」は、爽波出演のビデオ「映像による現代俳句の世界(15巻)」を図書課にたずね、和服姿の爽波が自句15句を読み上げる様を紹介。「金魚玉とり落としなば鋪道の花」から「大金をもちて茅の輪をくぐりけり」まで、15句のチョイスが興味深い。

座談会には、西野文代、榎本享、土岐光一、鈴木不意の4氏が集い、爽波を語る。
 皆さん「俳句スポーツ論」を、ご自分の句に置き換えてどれほど理解しておられるかなと、私は思うてます。なんぼいいもんが浮かんできても言葉にするのは技術ですよ。極端なことを言うと、虚子の花鳥諷詠、全部憶えろって。一つ出たらそのあとスーッと言えるくらいに。それをやったのが裕明、尚毅ですよ。

(…)

 お電話でも「つまるところ俳句は題詠なんですよ」とおっしゃってたわ。
 〈京都句会〉に来る時には、フジタホテルのロビーに二時間ほど座り込んで題詠されてました。自分で自分に題を出してね。(…)

(さいばら天気)

2009年12月8日火曜日

●新撰21・刊行

新撰21・刊行

『新撰21 21世紀に出現した21人の新人たち』
筑紫磐井・対馬康子・高山れおな(編)・邑書林
購入はこちら↓
http://8015.teacup.com/younohon/shop/01_01_03/644-5/

2009年12月7日月曜日

●FAQ

FAQ

新しい読者の皆さんのために、見逃した皆さんのために。

週俳2年目のFAQ 2008-12-28

週俳2年目のFAQ 余滴  2008年12月30日


【Q募集】
週刊俳句への質問を募集しています。なんでもご遠慮なくご質問ください。
tenki.saibara@gmail.com
期限:2009年12月24日(木)
回答は本誌・2009年12月27日号に掲載させていただきます。

2009年12月5日土曜日

●一万馬力 2009回文秋冬コレクション 井口吾郎

井口吾郎 2009回文秋冬コレクション 一万馬力
画像をクリックすると大きくなります。

2009年12月4日金曜日

●おんつぼ24 ミシェル・ンデゲオチェロ さいばら天気


おんつぼ24
ミシェル・ンデゲオチェロ
Meshell Ndegeocello


さいばら天気


おんつぼ=音楽のツボ


しりとりが「ん」で終わると負け。だったのだが、「ん」で始まる語がないのは「日本語では」という条件付き。世の中に「ない」わけではない。

「ん」で始まる言葉との最初の出会いは、アイザック・ディネーセン『アフリカの日々』(晶文社1981年)に登場する「ンゴング高原」であったかと思う。この素晴らしい小説(至上の紀行文学)は、映画化され、糞のような映画「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック監督1985年・アカデミー作品賞受賞)となった。

ちなみにンゴング高原にはンゴング競馬場があり、これはたしか名著『競馬の人類学』(長島信弘・岩波新書1988年)にも登場する。その後、「ん」で始まる語はどんどん増えていった。ぜんぶアフリカ由来だけれど…。例えばガーナ初代大統領は「エンクルマ」の表記が一般的だったが、綴りはNkrumah。今では「ンクルマ大統領」と呼ぶことが多い。

で、ミシェル・ンデゲオチェロ。

「ん」で始まるミュージシャンは、他にまだ聴いたことがない。私にとってかなりユニーク。

女性でベーシスト、それもチョッパー多用のファンクベースという点でユニーク。

そして最後に、その髪型。きほん短い丸刈り(五厘刈り?)かスキンヘッドか派手な剃り込み。ルックス的にもきわめてユニーク。

ところで、頭の「ん」という音のこと。裏拍にアクセントがあれば、オモテは当然のように「ん…」と弱拍(休符)。苗字からしてファンクなのだった。

めずらしい度 ★★★
根性はいってる度 ★★★★




おすすめアルバム

2009年12月3日木曜日

〔祐天寺写真館37〕幕

〔祐天寺写真館37〕


長谷川裕

鳥籠に木の鳥揺れり十一月


09年08月 中目黒 Nikon D300

2009年12月2日水曜日

●絶賛投句受付中

絶賛投句受付中

もうひとつのスピンオフ「毎日が忌日」で絶賛投句受付中
毎日が忌日

2009年12月1日火曜日

〔link〕歌仙

〔link〕歌仙

進行中の歌仙掲示板

みしみし

月天

2009年11月30日月曜日

●川崎展宏氏死去

川崎展宏氏死去
川崎展宏氏(かわさき・てんこう=本名川崎展宏=かわさき・のぶひろ、俳人、元明治大教授)29日午前2時30分、肺がんのため東京都内の病院で死去、82歳。広島県出身。葬儀・告別式は12月5日午前9時半から東京都府中市多磨町2の1の1、多磨葬祭場で。喪主は妻美喜子(みきこ)さん。80年、同人誌「貂」を創刊。句集に「夏」(読売文学賞)、「秋」(詩歌文学館賞)など。
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009113001000304.html

〔link〕語順

〔link〕語順

順番のこと:鯨と海星

2009年11月29日日曜日

●冬の星

冬の星

冬の星らんらんたるを怖れけり  富安風生

かぞへゐるうちに殖えくる冬の星  上田五千石

寒昴眼鏡摧(くだ)けしその夜も  赤尾兜子

ばらりと冬星目薬をさす口あける  川口重美

ことごとく未踏なりけり冬の星  高柳克弘

2009年11月28日土曜日

●古墳

古墳



壁画古墳人馬つちふるごとくなり  野見山朱鳥

さなぶりのおほぜい登る古墳かな  吉本伊智朗

臘梅や夢の山みな古墳型  渋谷道

2009年11月27日金曜日

●鉄バクテリア 野口裕

鉄バクテリア

野口 裕


先日、職場の同僚が鉄バクテリアのことを聞いてきた。とたんに、

  鉄を食ふ鉄バクテリア鉄の中  三橋敏雄

が思い浮かんだが、俳句をやる人ではないのでその話は封印し、聞いてゆくと、どれくらいの倍率の顕微鏡で見えるのかを相談したかったようだ。そう言われても、鉄バクテリアを見たことがない。画像検索をしてみると、一点それらしいのがあった。

≫画像 http://www.dowatec.co.jp/img/tec/water01-02.jpg

バクテリアとしても小さなもののようで、最低で千倍ほどの倍率が必要になりそうだ。手持ちの顕微鏡では見えないだろうと返事した。その人は、河川の浄化に興味があり、鉄バクテリアがそれに一役買っていることから、調べ出したようだ。

興味を引く句でありながら、なぜ今まで鉄バクテリアの姿を調べようとしなかったのか、改めて考えてみると、句の最後の「鉄の中」がくせ者のようだ。鉄の中にあるんだったら見えなくてもしょうがない、と勝手に思いこんでいた。どんな句でも、虚心に読むというのは難しいものだ。思わぬ形で精読する機会を与えられたような気がした。


2009年11月26日木曜日

〔祐天寺写真館36〕虹

〔祐天寺写真館36〕


長谷川裕

天人の袖に撫でらる砥石かな


上目黒 Nikon D300

2009年11月25日水曜日

2009年11月24日火曜日

●おでん

おでん



おでん煮えさまざまの顔通りけり  波多野爽波

おでん屋にただ集つてをりにけり  後藤立夫

おでん煮ゆマヤコ消息不明なる  如月真菜

2009年11月22日日曜日

●夜汽車

夜汽車

目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ  中村汀女

稲の香や闇濡らしゆく夜汽車の尾  橋本榮治

喉元を過ぎるは悲なり夜汽車なり  岸本マチ子

白桃の紅らむ頃を夜汽車かな  鳴戸奈菜

露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな  攝津幸彦

2009年11月21日土曜日

●波郷忌

波郷忌

波郷忌の柿すすりゐてさびしけれ  角川源義

波郷忌の虫の果なる虫のこゑ  岸田稚魚

波郷忌の風の落ちこむ神田川  秋元不死男

目薬の一滴波郷忌が近し  鈴木鷹夫

波郷忌や踏んで木の実の鳴る音も  飯田龍太

よき顔をして波郷忌の雀たち  今井杏太郎


2009年11月20日金曜日

〔link〕「草枕」国際俳句大会

〔link〕第14回「草枕」国際俳句大会

水と緑と文化の豊かな熊本へ:須藤徹の「渚のことば」
詩人という天職

公式ホームページ

2009年11月19日木曜日

〔祐天寺写真館35〕眠る

〔祐天寺写真館35〕
眠る

長谷川裕

芥子の散る嗚呼まっ白なまっぴるま


新大久保 Nikon D300

2009年11月18日水曜日

【評判録】稲畑廣太郎『八分の六』 (続)

【評判録】
稲畑廣太郎句集『八分の六』 (続)

2009年10月・角川21世紀俳句叢書

十月の句集から 稲畑廣太郎句集『八分の六』他を読む(高山れおな)
:俳句空間―豈weekly


2009年11月17日火曜日

●おんつぼ23 GO CINEMANIA 山田露結


おんつぼ23
GO CINEMANIA REEL 3
ワイルド・サイケを歩け!



山田露結


おんつぼ=音楽のツボ


はじめて聴いたとき、興奮のあまり全身に鳥肌が立った。カッコイイとはこのことだと思った。日本にこんなにカッコイイ音があったなんて知らなかった。

「GO CINEMANIA」シリーズは REEL 9 まであり、すべて日活アクションやロマンポルノなど映画のサウンドトラックで構成されているCDである。どのシリーズも超クールだが、シリーズ3作目、「ワイルドサイケを歩け!(Take a walk on the Psychedelic Side)」はアウトローな若者たちの破滅的な生き様を描いた映画「野良猫ロック」シリーズのサウンドトラックを中心に、ねちっこいオルガンやファズ・ギター、ワウ・ギターが満載で実にノリノリ(ノリノリなんて死語ですか?)。

1曲目の「野獣を消せ」~ワイルド・クライでの尾藤イサオのジェイムス・ブラウンばりのシャウトにいきなりノックアウト。その他、和田アキコ、梶芽衣子、ズー・ニー・ヴー、日野皓正、星勝、井上堯之などなど豪華メンバーが繰り出す40年代ゴーゴー・サウンドを聴いているうちに頭の中がサイケ色になってグルグル回り出し、いつの間にか異次元にトリップしてしまう(注射もしていないのに)。

聴き終わった後、煙草を吸い方や身のこなし、しゃべり方が何となく藤竜也になっている自分に気付く。


COOL度 ★★★★★
チンピラ度 ★★★★★



●田中裕明賞(再)

田中裕明賞(再)

田中裕明賞を創設 ふらんす堂、若手俳人育成狙って

2009年11月16日月曜日

2009年11月15日日曜日

2009年11月14日土曜日

●帰宅ラン 東京バリケード

帰宅ラン:ウラハイ出張掲載
東京バリケード

lugar comum


12日夜8時前。日比谷のジムを出ようとしたら、ジムのスタッフが、「皇居は、何かの式典とか、明日のオバマの警備とかで、スゴいことになってて、とても回れないそうですよ」と。

帰宅ランのつもりだったけど、そんなこと言われたら、かえって走りたくなっちゃった。1周だけするつもりで、向ってみたら…祝田橋の交差点のところに、バリケード。「はーい、走りにきた方、戻ってくださーい」とケーサツ官がマイクで怒鳴っています。せっかく着替えて、各地からワラワラと集まってきたランナーたちが、通り道をふさがれた蟻んこみたいに、右往左往していました。

私も、やむなく晴海通りを引き返して、いつもの湾岸ルートへ。築地4丁目で右折して、新大橋通りから、海岸通りへ入る。いつもは全フロア、これみよがしに煌々としているカレッタのビルが、珍しく暗い。どうやら、窓灯りでモザイク状のイルミネーションを作っているようでしたが、真下を走っているので、何のカタチかは、わかりません。

寒さは、まだ、然程でもないけれど、今晩は、けっこう風がありますね。潮風。ロング走のつもりなので、この道を出来るだけ遠くまで行きます。まっすぐ進んで芝浦、天王洲アイル東品川シ-サイド。だんだん寂しくなってきて、鮫津橋を渡って大井競馬場。このあたりまでは、時折、ランナーを見かけます。

平和島まで渡るつもりだったけど、だんだん真っ暗になってきて、不安になる。ちょっと足にもきていたので、このあたりで湾岸はあきらめて、鈴ヶ森で第一京浜方面へ。渡って、すぐウラに入り、大森海岸駅から北上、大森駅のむこうでJRのガードを潜って、池上通りのアーケードを西へ。

環7を過ぎて、呑川で右折。しばらく行って、右に逸れ、夏以来、気になっていた池上本門寺の参道に入る。呑川から見えていた、ライトアップされた山門への石段を、一度、登ってみたかったのです。

…近づいたら、笑っちゃいました、先客多数。体育会の学生っぽいのが何人も、ハアハア言いながら、階段トレしています。ロッキーか。私も混ぜてください。

不ぞろいで、一段の高さも高く、ゴツゴツとした無骨な石段でした。100段とちょっとかな。皆さん、休みを入れながら、何度も往復している様子ですが、私は2往復が限界でした。

最後は、そのまま山門をくぐり、参拝。戻ってきて、また呑川沿いへ。ここで、さすがに足がなくなりました。あとは石川台から東玉川へ抜けて環八の最短ルートで、帰宅。

ヘタりましたが、膝、腰などに246ハーフ後の深刻なダメージはなさそうで、安心しました。 これで「つくば」前のロングは最後にしようかな、と思います。

2009年11月13日金曜日

〔link〕『俳句』2009年11月号

〔link〕『俳句』2009年11月号

≫俳人劣化のなげき:かわうそ亭
http://kawausotei.cocolog-nifty.com/easy/2009/11/post-7511.html


2009年11月12日木曜日

〔祐天寺写真館34〕湖畔

〔祐天寺写真館34〕
湖畔

長谷川裕

万緑にひとかたまりの喪服かな


09年06月 相模湖町 Nikon D300

2009年11月10日火曜日

●おんつぼ22 My Bloody Valentine 松本てふこ


おんつぼ22
My Bloody Valentine


松本てふこ
おんつぼ=音楽のツボ


こたつにもぐるのが大好きだ。赤外線の輝きを心ゆくまで堪能し、顔面に熱を思う存分当てることにより生まれる満足感は何ものにも代え難い。あと、こたつの熱の届くところにあるありとあらゆる布の匂い、あれもいい。満足度が更にアップする。冬に決まって愛用する足カバーがもわーんと匂っていたりすると、ああこいつも温泉に浸かったような気分でくつろいでいるのだな、と足カバーを擬人化してみたりもする。勝手すぎる。

My Bloody Valentine 『 Loveless 』 は、こたつでの鑑賞にきわめて適したアルバムである。切り刻まれ、歪められ、加工されすぎて本来の響きを奪われたギターの音が無数に積み重ねられてそれがてんでバラバラに鳴らされるのではなく何とも妙なるメロディをバックアップしているところがこのアルバムの大変素敵な点のひとつである…というのは、こたつとあんまり関係ない。男女ツインボーカルの吹けば飛びそうな繊細な声が眠気を誘わなくもない、これは少し関係があるかもしれない。こたつで音楽によって眠気を誘われた、ということは、その音楽がこたつの熱を存分に楽しむ素敵なスパイスになっている、ということだから。というかこのジャケットの赤さ、こたつの赤外線の色そのものじゃないか。

歌詞が聞き取れない度  ★★★★★
ノイズ度        ★★★★


[オススメアルバム]『Loveless』




08年フジロック出演時の映像。私、これ行きました。うれしさとうるささとおかしさで、呆気にとられていました。

【評判録】柴田千晶『赤き毛皮』 〔続〕

【評判録】
柴田千晶句集『赤き毛皮』 〔続〕

2009年9月・金雀枝舎

ミヤコ・ホテルでつかまえて(高山れおな):豈 Weekly


2009年11月8日日曜日

〔俳誌拝読〕バックストローク28号

〔俳誌拝読〕
バックストローク 28号

発行人・石部明、編集人・畑美樹による川柳同人誌。 ホームページ≫http://ww3.tiki.ne.jp/~akuru/back-hp/index-2.htm 

(俳誌ではないが、〔俳誌拝読〕のシリーズのひとつとさせてください)

33人の同人作品(7句ずつ)が並び(アクアノーツ)、その直後、石田柊馬による「アクアノーツを読む」は14頁に渡り、詳細に同人作品を読む(月遅れではなく、掲載句を取り上げる点、読者にも嬉しい)。 多くの句を綿密に取り上げることはせず、気ままに。

廃核利用 痔核治療に使えぬか  渡辺隆夫

核大国 痔核の数で勝負せい   同

ばかばかしくて(もちろん、いい意味です)、感心した。いまの俳句世間で、ぶざまな反戦句、反核句(戦争や核への反対を意を五七五に込める自分は善良とでも思いたいのだろう)ばかりが出回るのに比べれば雲泥の差。気持ちよくばかばかしい。

十六夜亜細亜のおこげ美味かりし  きゅういち

魔がさしたとしか言えませんモロヘイヤ  丸山進

立秋の端から落ちるオートバイ  柴田夕起子

うさぎの話ユーウツになる夫婦  同

おもしろくなりすぎたバナナ  井上せい子

いいひとがいたらと思う崖崩れ  重森恒雄

消しゴムは消しゴム蛹は蛹なり  石田柊馬

豪傑は滝を眺めているばかり  小池正博

目の中はインドネシアの山の彩  樋口由紀子

雨だれの向こうのなつかしい耳  畑美樹

水母でも油揚げでもない死人  石部明

川柳の門外漢として蛮勇を奮って言えば、いわゆるノンセンス文学のおもしろさが、川柳にはある。俳句に、それがないことはないが、川柳には主成分とまで言わなくとも、かなりの成分量で、そのおもしろさがあるように思えた。

(ノンセンス文学は、むかし「マザーグースの歌」などで巷間に広まった範疇かとも思うが、それが例であって、さしつかえない)

読むもの(私)を、ことばの因習のひとつ(伝えると伝えられるの関係)から一瞬解き放ち、絶句させてくれることばであれば、私は気持ちがいい。簡単にいえば、「なに言ってるんだ、これ?」と笑いながら吃驚できれば、それで十全である。


p29からは石部明選による投句作品(ウィンドノーツ)および「ウィンドノーツを読む」。最多7句~最少4句。俳句結社誌における主宰選にあたるページだろう。 p44-45の見開きは、課題吟「蛸」。蛸を詠み込んでもいいし、テーマとして扱ってもいいというのが「課題吟」の意味らしい。 

ジャズの終焉にはおでんの吸盤を  湊圭史

蛸壺へ入れた空気が取り出せぬ  飯島章友

開脚の四本ずつを認めたり  平賀胤壽

p46以降に種々の散文が収まる。小特集「うたの起源/川柳の起源」(羽田野令、小池正博)および書評3本。 全体のバランスは、句の比重が重い。実作が土台となるのは、多くの俳句結社誌、俳句同人誌と同様だが、掲載された句への言及(批評、評価、鑑賞)に、熱く濃いものを感じた。 (さいばら天気)

2009年11月7日土曜日

●コマキスト 中嶋憲武

コマキスト

中嶋憲武


おとなりのクミちゃんは、目のくりくりとして眉毛の濃い、ちょっと栗原小巻に似た子だった。二つ年下のクミちゃんは、ぼくに対していつも意地悪だった。クミちゃんのお兄さんと近所の子と三角ベースをしているときも、我が儘にキャアキャアわめくので、ぼくはあまりいい感情を持っていなかった。

栗原小巻は、その当時大好きな女優で、テレビドラマ「三人家族」など食い入るように観ていた。あおい輝彦の歌う主題歌を、今だって歌うことが出来る。

  あのときは何気なく会ったあの人が
  なぜか心に残る淡い恋ごころ
  この広い空の下ぼくのさがす
  幸せはあなただけあなただけ

三年ほどして、六年生になったぼくは通学班の班長で、クミちゃんが副班長だった。クミちゃんはとてもおしとやかになっていて、大人びていた。一年生の面倒もよくみた。

その頃、田宮二郎と栗原小巻の「知らない同志」というドラマを観ていた。田宮二郎がスーパー「プラネット」の店長で、栗原小巻との恋のお話だった。ある日、下校の時間、クミちゃんと一緒になった。北風の吹く畦道を口数少なく二人並んで帰った。ぼくはなんとなく田宮二郎になった気分だった。

作文の時間にぼくは栗原小巻のことを書いた。先生がそれを読みあげ、吉永小百合を好きな人のことをサユリストというように、コマキストという人もいるのですと言った。ぼくは、コマキストなのだなと思った。

2009年11月6日金曜日

【評判録】稲畑廣太郎『八分の六』

【評判録】
稲畑廣太郎句集『八分の六』

2009年10月・角川21世紀俳句叢書

:喜代子の折々

2009年11月5日木曜日

〔祐天寺写真館33〕雲

〔祐天寺写真館33〕


長谷川裕

まくわ瓜割れば胎児のホーチミン


09年09月 五本木 Nikon D300

2009年11月3日火曜日

●文化の日

文化の日

菊の香よ露のひかりよ文化の日  久保田万太郎

日本のわれはをみなや明治節  三橋鷹女

うごく大阪うごく大阪文化の日  阿波野青畝

明治節乙女の体操胸隆く  石田波郷

地下街に鮮魚鮮菜文化の日  鷹羽狩行

文化の日乾布摩擦を隠れてす  池田澄子

虚子の名にころりとまゐる文化の日  筑紫磐井


2009年11月2日月曜日

●「林田紀音夫全句集」読書会のお知らせ

「林田紀音夫全句集」読書会のお知らせ

1.日時 11月8日(日)13:30~16:30
2.場所 神戸三宮「カルメン」 
   http://www.warp.or.jp/~maroad/carmen/
3.費用 一次会無料、二次会(希望者は同場所で夕食)
4.主題
  句集以後の時代における、海程発表句と花曜発表句の比較:野口裕
  林田紀音夫はどう論じられてきたか?:大橋愛由等

 

野口が営々と続けている「林田紀音夫全句集」の読みの作業も、現在「花曜」発表句の平成八年を残すところまで来ました。あとは、膨大な未発表句をどう読むかを残していますが、とりあえず林田紀音夫の句業を一望できる地点までこぎ着けました。

今回の読書会は、野口の句集以後の句の変遷を辿る作業と、林田紀音夫がどう論じられてきたかを大橋愛由等が報告します。会場が若干遠くなる人も多いと思いますが、時間の許す方はどうぞお立ち寄り下さい。(野口裕)

10月にやるべきところ、報告者の希望で11月になりました。みなそれぞれ企画があるので、読み込みのいるものはこれくらいのインターバルが必要でしょう。そのかわりこの一回の時間は重厚です。ご期待下さい。

好調大橋さんが名乗りを上げて独自の切り込みをされる模様、期待しましょう。時間があれば、最近の話題を話し合いましょう。(堀本 吟)

2009年11月1日日曜日

●太田うさぎ げげげ 10句

俳諧スピーチバルーン・シリーズ01
太田うさぎ げげげ

画像をクリックすると大きくなります

2009年10月31日土曜日

〔暮らしの歳時記〕石蕗の花 山田露結

〔暮らしの歳時記〕
石蕗の花

山田露結


最近は何もイイ事がない。
「いい事ないなあ。寂しいなあ。」とブツブツ言ってたらコンちゃんが「またその話か。」と言ってイヤな顔をした。彼の言葉はいつもオレを不安にさせる。

「飲みに行く?」

オレはコンちゃんを誘って町のはずれにある『マデ』という行き付けの居酒屋へ向かった。音楽好きのマスターがやってるその店にはいつもフォークギターが置いてあって、時々常連客が弾き語りをすることがある。その日、店は忘年会のあと流れてきた連中なんかでけっこう賑わっていた。オレが生ビールをジョッキで立て続けに3杯飲むと、マスターが「今日は調子いいねえ。ちょっと何か歌ってよ。」と言うので、待ってましたとばかりにギターを弾いて歌いはじめた。

オレは調子に乗って2、3曲続けて歌った。オレのレパートリーはフォーク・ソングやら演歌やら滅茶苦茶だがこの店に来る客はだいたいオレと似たような世代だったので大いにウケた。どういうわけかオレが歌う度、喋る度に拍手喝采が起こり、店中を巻き込んでの大盛り上がりになった。「君、面白いねぇ。」と言っておひねりをくれる客まで現れた。こんな経験は初めてである。オレはまるでスターにでもなったかのような気になって上機嫌で歌いまくった。歌いながらビールのジョッキをいったい何杯空けただろうか。その間、コンちゃんは騒いでいるオレを尻目にカウンターの隅に座ってずっと一人で黙って飲んでいた。

目が覚めると自宅の玄関の前だった。何時まで店にいたのか、どうやって帰ってきたのかはまったく覚えがない。なぜか家の鍵を手に握り締めたまま、中へは入らずに靴を枕に寝ていたようである。こんな季節によく表で寝ていられたと思うが、不思議と体は温かかった。

起き上がって上着のポケットから携帯電話を取り出して開いて見ると、コンちゃんからの着信履歴が何回か残っていた。それからもう一人、誰だかわからない電話番号からも着信履歴が何回か残っていた。

「誰だろう。」

オレはその誰だかわからない電話番号へ掛け直してみた。

「あ、もしもし。スミマセン。あの、電話、もらいました?」

「・・・・・」

「あの、もしもし?」

確かに誰か電話に出ているのだが、どういうわけか相手は何もしゃべらない。
しばらくすると女の声で一言、

「あんた、サイテーだよね。」

そう言って電話はそのままプツっと切れてしまった。オレは急に不安になってコンちゃんに電話してみた。

「もしもし、コンちゃん?あのさー、ゆうべ何かあった?」

「え?何かあったって、覚えてないの?けっこうめちゃめちゃだったよ。店のトイレに客の女を引っ張り込むしさあ。『マデ』のマスターもかなり怒ってたよ。」

まさか、と思った。まったく何も覚えてない。コンちゃんはそれ以上詳しくは話さなかった。オレも聞きたいと思わなかった。聞くのが怖かった。オレはふと『マデ』の店内にマスターの字で書いてある張り紙を思い出していた。

「飲み潰れるマデ。夜が明けるマデ。」

店で盛り上がったときにいつもマスターが言う文句である。しかし、いくら飲み潰れるまでと言ったって限度がある。昨夜はちょっとやり過ぎたみいたいだ。

「何やってんだろうな、オレ。」

急に悲しいような、切ないような、何とも言えない気持ちで胸が一杯になった。表を見ると家の前をサラリーマンや高校生が足早に通り過ぎて行く。もう出勤時間なのだ。ふと向かいの家の庭にかたまって咲いている石蕗の花が目に飛び込んできた。朝の日差しに照らされたその無垢な黄色がやたらにまぶしく、何かオレを責めているようにも思えた。

数日後、再びコンちゃんに会った。
「いい事ないなあ。寂しいなあ。」とブツブツ言ってたらコンちゃんが「またその話か。」と言ってイヤな顔をした。彼の言葉はいつもオレを不安にさせる。今日は酒を飲まずに寝よう。


さびしさの眼の行く方や石蕗の花  蓼太

2009年10月30日金曜日

●Haiku & Saxophone

Haiku & Saxophone



2009年10月29日木曜日

〔祐天寺写真館32〕テールランプ

〔祐天寺写真館32〕
テールランプ

長谷川裕

自動車は昆虫に似ている。


目黒区 Nikon D300

2009年10月28日水曜日

●「北斗賞」創設

「北斗賞」創設

第1回 「北斗賞」募集(『俳句界』2009年11月号より)

条件:既作・新作・未発表作を問わず自作150句
応募資格:年齢満40歳まで
応募料:無料
締切:2010年3月31日(消印有効・郵送のみ受付)
選考委員:石田郷子・五島高資・高山れおな
受賞作は文學の森より句集出版

※原稿書式、送付先等、詳細は≫こちら

2009年10月27日火曜日

【評判録】後閑達雄『卵』(続)

【評判録】
後閑達雄句集『卵(続)

:林誠司 俳句オデッセイ

2009年10月26日月曜日

2009年10月25日日曜日

●りんごの歌

りんごの歌



空は太初の青さ妻より林檎うく  中村草田男

星空へ店より林檎あふれをり  橋本多佳子

皿の上の林檎揺れをり食堂車  高浜虚子

2009年10月24日土曜日

2009年10月23日金曜日

●虫の夜

虫の夜

2009年10月22日木曜日

〔祐天寺写真館31〕シャガール

〔祐天寺写真館31〕
シャガール

長谷川裕


銀河系のとある酒場ならぬ、とある喫茶店。

国立 Nikon D300

2009年10月21日水曜日

●俳句自動生成(低性能)

俳句自動生成(低性能)

HAIKULOID
http://www.iphone-quality.com/apps/haikuloid/

2009年10月20日火曜日

2009年10月19日月曜日

〔暮らしの歳時記〕きのこ さいばら天気

〔暮らしの歳時記〕
きのこ

さいばら天気


去年の12月に死んだ山本勝之が、あるとき、東京近郊の山の中で、きのこを買った。

吟行の途中、掘っ建て小屋があって、ヒッピーの生き残り、というか、「ずっとヒッピーやってます」てな感じだから、年の頃なら還暦ほどのオッサンが数人、昼間から暇そうに軒下に坐り、烏骨鶏の卵やら山草を棚に並べて売っていた。山本勝之が目を付けたのは、そうした商品ではなくて、そのへんに捨て置かれたきのこだった。

「それ、ダメだよ」とオッサン。

けれども、未練が残ったらしい。山本勝之は「どうしても」と頼み込み、手に入れた。ヒッピーが摘んできたのだから「魔法のきのこ」だと踏んだのだろう。たいせつに持って帰った。

後日、「あれ、どうだった?」と訊いてみると、激しい腹痛に襲われ、トイレに駆け込むと、真っ黒な便が出たという。

ふつうに、毒きのこでしょ? それ。

「エラい目に遭うたわ」

山本勝之は笑いながら答えたが、その笑顔は、苦痛に歪んでいるようにも見えた。その夜がよみがえったのか、笑うとき、苦しいとき、どちらも同じような顔になるのか、そのへんは不明。

ああ、しかし、勇敢にも喰ったのだ。彼は。素性の知れぬきのこを。

どこまでむちゃくちゃなんだ? と大いに感心したものだ。


  これはいい茸だしかも二つある   鴇田智哉

  三つほど悪い茸が出てゐたる     〃


2009年10月18日日曜日

■日本全国俳句日和

NHK-BS2 日本全国俳句日和

10月25日(日)11:00-16:00 放映
10月19日(月)13:00 投句受付開始
≫詳細 http://www.nhk.or.jp/bs-tankahaiku/

〔link〕俳句と宗教

〔link〕俳句と宗教

俳句は宗教か~長谷川かな女を中心に:Haiku New Generation

2009年10月17日土曜日

■現代俳句全国大会・入賞作

現代俳句全国大会・入賞作
第46回現代俳句全国大会(現代俳句協会主催、毎日新聞社後援)の入賞者が16日、決まった。応募1万5432句から選ばれた。授賞式は31日、東京都台東区の東天紅上野店で。主な入賞者と作品は次の通り。(敬称略)
<現代俳句全国大会大賞>神奈川県中井町、山口清山(82)「風になる人から入る芒原」▽東京都八王子市、千葉三郎(82)「九人産んだ大きなお尻潮干狩」<毎日新聞社賞>大分県九重町、駒走松恵(92)「沖縄忌母は生涯海のいろ」
毎日新聞 2009年10月16日 20時10分

2009年10月16日金曜日

●おんつぼ21 G.ラヴ&スペシャル・ソース さいばら天気


おんつぼ21
G.ラヴ&スペシャル・ソース
G. Love & Special Sauce


さいばら天気






例によって、ものぐさにも、Wikipediaによれば…
G・ラヴ&スペシャル・ソース(G. Love & Special Sauce)は、アメリカはフィラデルフィア出身のオルタナティヴヒップホップバンド。ジャズやブルースといったルーツ・ミュージックをベースにしつつ、ヒップホップを取り込んだ複合的な音楽性が特徴。陽気でゆったりとしたグル-ヴにG・ラヴのラップが合わさったオーガニックな曲調は評価が高く、旧知の仲であるジャック・ジョンソンらと共にサーフ・ミュージック・シーンの代表格としても人気が高い。
…とあって、参考にしたい人はしてください(*1)

私自身は、こういう記述、どうでもいいなあ、と。「ヒップホップを取り込んだ」って言われても、ピンと来ないし、「サーフ・ミュージック・シーンの代表格」と言われても、そういう脈絡で聞いてるわけではないし。

まあ、そうした資料は置いておいて、どんな音楽かといえば…

 たらっとしている

このひとことで済む。

ギターを弾いて歌い、ときどきハーモニカ(ブルースハープ)を吹くのが、G. Love という青年。「たらっ」とした感じは、このギターから来るところが大きい。これでいいのかなあ、まあ、これでいいんだろうなあ、といった演奏で、頼りないといえば頼りないが、それで問題か?と問われれば、まったく問題ありません。

楽器の演奏技術というのは、手段であって目的ではない。技術の要不要は、何をやりたいか、による。高度な技術、洗練された技術が必要な音楽なら、それが必要になるし、違うなら、不要。

むかし、知り合いの音楽ライターの知り合いの音楽ライター(ややこしい)が、日本公演の最中の楽屋に、この G. Love を取材に訪ねたところ、ジャムセッション風に遊びながら、ギターを弾いていた。ライブでヘタそうにギターを弾いていても、そこはプロ、実は巧かったりする、というアタマがあったが、聞いてみると、「マジでヘタ」だったそうで、なかなかいい話である。中途半端にじょうずだったりすると、「たらっとした感じ」は出ない。

さて、G.ラヴ&スペシャル・ソース。泥臭いおもしろさはあるし、レイドバック(*2)なところも、いい感じである。

ずぼら度 ★★★
へなちょこ度 ★★★★

(*1)もっと詳しく、という方は、英語版でどうぞ。≫G. Love & Special Sauce
(*2)レイドバック 数十年前によく使用されたポップ音楽用語。簡単にいえば、「くつろいだ、のんびりとした、ゆったりした」。つまり、友だちの家に行ったら、まずは何はともあれ炬燵に潜り込み、しゃべる話題を探すこともなく、たらっと、怠惰に過ごす、あの感じだ。




おすすめアルバム↓

2009年10月15日木曜日

〔祐天寺写真館30〕仙寿院交差点

〔祐天寺写真館30〕
仙寿院交差点

長谷川裕

この手前のトンネルはお化けで有名。


渋谷区 Nikon D300

〔link〕橋本夢道

〔link〕橋本夢道

橋本夢道とあんみつ、そして飢餓食─『無禮なる妻』の初々しさ
:須藤徹の「渚のことば」

2009年10月14日水曜日

〔鉄道物語〕ルリちゃん 中嶋憲武

きょう10月14日は「鉄道の日」。


ルリちゃん

中嶋憲武


日だまりの私鉄の車内。ある駅で三つくらいの女の子を乗せた乳母車を押した若い母親と、その友人らしき女性が乗って来て、僕の隣りに座を占めた。

女の子は、さとう珠緒って小っちゃい時きっとこんな顔だったんだろうなと思わせる顔つき。その時、僕はQuickJapanの「小島慶子キラ☆キラ」の特集を読んでいて、意識がそちらに向いていなかったのだが、女の子の幼児特有の大きく響く声と、声を発するたびに全身に力が籠るのか、足をバタバタするので女の子のつま先が、僕の脛あたりにいちいち当たり、自然に意識がそちらに向いていった。

母親が女の子に、こう尋ねているところだった。女の子はルリちゃんというらしい。
「ルリちゃん、悪魔?」

「悪魔じゃないっ!ルリちゃん!」
怒っているように大きな声で答える。ぼくが彼で、きみも彼で、きみはぼくだからぼくたちはみんな一緒とでも言うように答える。

「天使?」
「天使じゃないっ!ルリちゃん!」
女の子の答える声が大きく高いので、母親はいちいち「しーっ」と口に指を当てている。
「じゃ、ルリちゃん、鬼?」
「鬼じゃない!ルリちゃん!」と、足をバタバタ。僕のジーンズの裾に当たりまくる。
「よその人にいけないでしょ」と、母親。
「じゃ、ルリちゃん、兎だ」
「兎じゃない!ルリちゃん!」
「兎、どうやんの?」
「こう」と言って、女の子は赤い髪留めで留めている両方の髪を、両手でそれぞれ上に持ち上げて兎のポーズを取った。
「兎は跳ねるよね?」
「ハゲルじゃないっ!」ひときわ大きな声だったので母親は更に大きく「しーっ」と指を口に当てて言った。
「ルリちゃん!」

「晴れてるね」車窓からさんさんと日差し。雲ひとつない上天気。
「晴れてない!ルリちゃん!」
「コニちゃん?」…(誰?)
「コニちゃんじゃない!ルリちゃん!…ねー、抱っこ」
「抱っこじゃないでしょ。赤ちゃんじゃないんだから」
「コニしゃん、好きじゃない」
「ヨネトリスケ」…(意味不明)
「モボゴじゃないっ!」…(意味不明。この母と子にのみ共通の話題だろうか?)

終点池袋に到着しますと車内のアナウンス。

「終点だって」
「終点じゃない!ルリちゃん!」
「降りるよ」
「降りんじゃない!ルリちゃん!」

最後の最後までルリちゃんはルリちゃんであると言い張った。



2009年10月12日月曜日

〔link〕食の風景

〔link〕食の風景

高柳克弘「「食」をめぐる風景」(『俳句』2009年10月号)をめぐって

斉藤斎藤さんと佐藤:B.U.819
歌は読んでるだけでおもしろい:曾呂利亭雑記