2009年11月8日日曜日

〔俳誌拝読〕バックストローク28号

〔俳誌拝読〕
バックストローク 28号

発行人・石部明、編集人・畑美樹による川柳同人誌。 ホームページ≫http://ww3.tiki.ne.jp/~akuru/back-hp/index-2.htm 

(俳誌ではないが、〔俳誌拝読〕のシリーズのひとつとさせてください)

33人の同人作品(7句ずつ)が並び(アクアノーツ)、その直後、石田柊馬による「アクアノーツを読む」は14頁に渡り、詳細に同人作品を読む(月遅れではなく、掲載句を取り上げる点、読者にも嬉しい)。 多くの句を綿密に取り上げることはせず、気ままに。

廃核利用 痔核治療に使えぬか  渡辺隆夫

核大国 痔核の数で勝負せい   同

ばかばかしくて(もちろん、いい意味です)、感心した。いまの俳句世間で、ぶざまな反戦句、反核句(戦争や核への反対を意を五七五に込める自分は善良とでも思いたいのだろう)ばかりが出回るのに比べれば雲泥の差。気持ちよくばかばかしい。

十六夜亜細亜のおこげ美味かりし  きゅういち

魔がさしたとしか言えませんモロヘイヤ  丸山進

立秋の端から落ちるオートバイ  柴田夕起子

うさぎの話ユーウツになる夫婦  同

おもしろくなりすぎたバナナ  井上せい子

いいひとがいたらと思う崖崩れ  重森恒雄

消しゴムは消しゴム蛹は蛹なり  石田柊馬

豪傑は滝を眺めているばかり  小池正博

目の中はインドネシアの山の彩  樋口由紀子

雨だれの向こうのなつかしい耳  畑美樹

水母でも油揚げでもない死人  石部明

川柳の門外漢として蛮勇を奮って言えば、いわゆるノンセンス文学のおもしろさが、川柳にはある。俳句に、それがないことはないが、川柳には主成分とまで言わなくとも、かなりの成分量で、そのおもしろさがあるように思えた。

(ノンセンス文学は、むかし「マザーグースの歌」などで巷間に広まった範疇かとも思うが、それが例であって、さしつかえない)

読むもの(私)を、ことばの因習のひとつ(伝えると伝えられるの関係)から一瞬解き放ち、絶句させてくれることばであれば、私は気持ちがいい。簡単にいえば、「なに言ってるんだ、これ?」と笑いながら吃驚できれば、それで十全である。


p29からは石部明選による投句作品(ウィンドノーツ)および「ウィンドノーツを読む」。最多7句~最少4句。俳句結社誌における主宰選にあたるページだろう。 p44-45の見開きは、課題吟「蛸」。蛸を詠み込んでもいいし、テーマとして扱ってもいいというのが「課題吟」の意味らしい。 

ジャズの終焉にはおでんの吸盤を  湊圭史

蛸壺へ入れた空気が取り出せぬ  飯島章友

開脚の四本ずつを認めたり  平賀胤壽

p46以降に種々の散文が収まる。小特集「うたの起源/川柳の起源」(羽田野令、小池正博)および書評3本。 全体のバランスは、句の比重が重い。実作が土台となるのは、多くの俳句結社誌、俳句同人誌と同様だが、掲載された句への言及(批評、評価、鑑賞)に、熱く濃いものを感じた。 (さいばら天気)

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