2011年11月25日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







電熱器にこつと笑ふやうにつき


椙元紋太 (すぎもともんた) 1890~1970

暖房器具が恋しい季節になった。電熱器をにこっと笑うようについたとは上手く言い当てたものだと感心する。同時にそのように見た作者に温もりを感じる。電熱器がつくとそのまわりも人の気持ちも暖かくなったのだろうと想像する。そう言えば、昔はテレビの映りが悪かったら叩いて直していた。

今の暖房器具はにこっと笑うようには起動しない。スピードと機能性が何よりも求められているのに、笑っていたのでは売れ残ってしまう。にこっと笑うようにつき、にこっと笑うように感じ、にこっと笑うことに共感するようなのんびりした時代は終ってしまったのかもしれない。

椙元紋太は昭和4年「ふあうすと川柳社」を創立し、その代表、編集発行人になった。「ふあうすと」はゲーテの代表作からの命名であるらしい。『椙元紋太川柳集』(1949年刊)

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