2012年2月20日月曜日

●月曜日の一句〔阪西敦子〕 相子智恵


相子智恵








雛飾る雛しまひたくなりながら  阪西敦子

アンソロジー句集『俳コレ』(2011.12/邑書林)より。

雛人形は女の子の成長を祝うとともに、その子の一生の災厄を人形に身代りにさせる形代(かたしろ)でもある。

そして雛人形というのは、一年のうちでしまわれている時間がほとんどだ。人形たちはずっと暗闇の中で眼を開いたまま、シンとしまわれている。その眼が光を浴びる期間は一ヶ月ほどしかない。

掲句は雛人形を飾る華やかな「明」の気分とともに、形代(かたしろ)としての人形に感じるうすら怖い感覚や、人形がしまわれている闇の深さなど「暗」の感覚をも同時に、鋭敏に捉えている。

飾るときに、もうしまいたくなってくる……という明暗織り交ぜた感覚は、みなが潜在的に感じていながらも、案外読まれていなかった視点ではないだろうか。

歳時記の例句にしたくなるような、再発見の句である。


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