2012年5月11日金曜日

●金曜日の川柳〔杉野草兵〕 樋口由紀子


樋口由紀子








五十歳でした つづいて天気予報


杉野草兵(すぎの・そうへい)1932~2007

ゴールデンウイークが終った。華やかで賑やかなニュースの一方で悲しくて痛ましい事故や事件が後を絶たない。やりきれない思いを抱いている間に、画面はあっという間に次の出来事に切り替わっている。そんなニュースを聞きながら、ふとこの句が口をついて出てきた。

ラジオかテレビのアナウンサーの言葉を川柳に仕立てたのだろう。「五十歳でした」というのだから、訃報だろう。人の死を伝えたそのすぐ後に同じトーンで天気予報が続く。生も死も隣り合わせのひとコマであり、表裏である。現実の一場面をなにげなく突いて、皮肉っている。

杉野草兵は青森の地から川柳の文芸性を高めるために「川柳界の芥川賞」といわれた川柳Z賞を創設し、全国に門戸を開き、後進を育てた。〈あいつは死んだかな防波堤の右が北〉〈遺影なき葬送聖歌第二六六〉 杉野草兵集『C』(かもしか川柳文庫第21集 1989年)所収。

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