2012年7月23日月曜日

●月曜日の一句〔伍藤暉之〕 相子智恵


相子智恵









大緑蔭虫・鳥爪を休めけり  伍藤暉之

句集『PAISA』(2012.7/ふらんす堂)より。

緑蔭という、ただ青葉の繁りが作る涼しい木蔭ではなく、〈大緑蔭〉と詠んだところに迫力がある。鬱蒼とした森だろうか。あるいは山も、ひとつの大きな緑蔭といえるかもしれない。

そんな巨大な緑蔭に、虫たちも鳥たちも爪を休めている。〈爪〉を出したのが個性的だ。蝉や兜虫などの昆虫は爪が鋭く、鳥の爪も鋭い。そうした爪で木々をしっかりとつかみ、安心して体を休めているのだ。

無数の虫や鳥たちから、鋭い爪でしがみつかれた木々には頼もしさがある。それと同時に爪が食い込む木肌の痛みも思われてくる。鋭い爪で掴まれ、あるいは穴を開けて巣を作られ、実や葉は鳥や虫たちの食べ物となる。そしてなお、どっしりとしている木々の、物言わぬ痛みと強さを想像する。緑蔭という存在が、あらためて大きなものに思われてくるのである。

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