2012年10月1日月曜日

●月曜日の一句〔林昭太郎〕 相子智恵



相子智恵







にはとりの千羽鎮もる月夜かな  林昭太郎

句集『あまねく』(2012.8 ふらんす堂)より。

これを書いている9月30日は中秋の名月だが、残念ながら台風が来ていて月を拝めそうもないので、せめて月の句を読もうと思う。

掲句、鶏舎だろうか。夥しい数の鶏たちが、つやつやと白い羽に包まれた体をまるめ、静かに眠っている。

冴え冴えとした月の光が鶏舎に射し込み、鶏たちの体を照らしている。まるで照らされた鶏舎全体が白く発光するようである。ここには月と鶏たちの、静かな光の交歓がある。

静かな月の光はやがて、朝のまぶしい太陽の光に入れ替わってゆく。千羽の鶏たちは一斉に鳴き、夜明けを告げることだろう。

夜の象徴である月と、朝を象徴する鶏。もの静かな一句の奥底には、夜から朝へ、静から動への“時間”というものが、伏流水のように存在している。そう思えてくるのである。

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