2012年11月16日金曜日

●金曜日の川柳〔寺西文子〕 樋口由紀子



樋口由紀子







フンフンとお好み焼を裏返す

寺西文子 (てらにし・ふみこ) 1941~

関西人は粉もんが好きである。たこ焼き器はほとんどの家にある。ちなみに我が家には大中小と三つあり、人数や用途によって使い分けている。お好み焼きも好物だ。関西のお好み焼屋の店の多さに他県の人は驚く。

「フンフン」とは相槌である。お好み焼を焼きながら、友だちの悩み事の相談か愚痴を聞いているのだろう。話はまだまだ終りそうにないけれど、目の前のお好み焼の下半面はおいしそうに焼きあがってきている。「それで、どうしたん?」と相手の話に受け答えしながら、コテで裏返して、もう半面を焼く。

焼き上がっても話は終りそうにないが、とりあえず熱いうちに食べることにする。フーフーとお好み焼をほおばっているうちに友人の気持ちも静まってくる。「考えてもしゃあないわ」「ほんまほんま」「ここのお好み焼はいつ来てもおいしい」「またこよね」、といつものパターンに落ち着く。人の心の動きを上手くとらえている。『主婦の星』(編集工房円刊 2004年)所収。

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