2012年11月9日金曜日

●金曜日の川柳〔前田芙巳代〕 樋口由紀子



樋口由紀子







指が短いので哀しいのでしょうか

前田芙巳代 (まえだ・ふみよ) 1927~

足の長い人、目の大きな人、鼻の丸い人、いろんな人がいる。指が短いから哀しいのかと問う。当然手も小さいから、大切なものがこぼれおちたり、摑もうとしても摑みきれなかったものがあったのかもしれない。けれども、指が短いのが哀しみの原因ではないことは作者が一番よく知っている。

ほんの少し前まで女の人は今よりももっともっと生きにくかった。女性はこうあらねばならないという縛りが生活全般にあり、世の中に浸透していた。自分らしく生きることができずに、我慢したままの一生を終えた女性がたくさんいる。「哀しいのでしょうか」と言われると本当に哀しくなる。

〈母の櫛どこに置いてもふしあわせ〉〈面売りの最後の面は売りのこす〉〈馬よりも貧しく生まれ傘を干す〉 『しずく花』(1983年刊 川柳「一枚の会」)所収。



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