2012年12月31日月曜日

●月曜日の一句〔山田露結〕 相子智恵

 
相子智恵







夢は枯野を少年少女合唱団  山田露結

句集『ホームスウィートホーム』(2012.12 邑書林)より。

今年最後の鑑賞となった。大晦日である。

年末のせいか、掲句を一読して〈少年少女合唱団〉という単語から、(句に描かれているわけではないが)ベートーベンの第九『歓喜の歌』の大合唱にまで想像が及んだ。

「年末に「第九」が演奏されるのはなぜ?」という記事(http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20111229-00022426-r25)によれば、年末の「第九」は、第二次大戦直後の貧しい時代に、日本のオーケストラが“もち代稼ぎ”で始めたことらしい。来年は戦後68年になる。

新しい年に無邪気にワクワクできなくなったのは、この時代だからなのか。それとも私が歳を取ったせいなのか。きっとその両方なのだろう。同句集中の〈冬ざれのロープ掲揚塔を打つ〉〈冬日射す希望に似たり希望でなし〉といった寒々しい冬の句に、私はしみじみと共感する。

掲句の〈夢は枯野を〉は、言わずと知れた芭蕉の死の床での「病中吟」〈旅に病で夢は枯野をかけ廻る〉を踏まえている。病床の夢の中でも、芭蕉は枯野をさまよい、次の俳句を求めて旅を続けた。

私たち現代の俳人もまた、次の一句を求めて、来年も枯野の旅を続けることになるだろう。その旅の間には、少年少女合唱団の希望の歌声が、突然冬の空から降ってくるような僥倖の瞬間も、きっとあるのだろう。
 

2012年12月30日日曜日

〔今週号の表紙〕第297号 あかとき

今週号の表紙〕第297号 あかとき

写真・小川由司 文・西原天気





第297号は、今年2012年の最後の号。皆様にはいろいろとお世話になりました。

良いお年をお迎えください。


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2012年12月29日土曜日

【既刊】『虚子に学ぶ俳句365日』

お年始に

【既刊】週刊俳句編『虚子に学ぶ俳句365日』

〔執筆〕相子智恵 神野紗希 関悦史 高柳克弘 生駒大祐 上田信治


2012年12月28日金曜日

●金曜日の川柳〔河野春三〕 樋口由紀子



樋口由紀子







おれの ひつぎは おれがくぎうつ

河野春三 (こうの・はるぞう) 1902~1984

昭和39~40年、作者62~64歳の時の作品。春三は82歳で亡くなったので、まだまだ元気な頃の一句である。ひらがな表記と「おれの」と「ひつぎは」のあとの一字空けが気になる。一呼吸おくつもりであったのだろうか。七七句である。それにしてもなんともマッチョな川柳であろうか。

河野春三ほど覚悟と矜持の似合う川柳人はいないだろう。自負心の強さと妥協できない強情な人であったと聞く。掲句はその極みのようである。

「私」「人間派」「天馬」「馬」「匹」「風」などの柳誌の発刊と廃刊を繰り返し、生涯川柳革新に邁進した。彼の影響を受けた川柳人は多い。『定本河野春三川柳集』(たいまつ社刊 1982年)所収。

2012年12月27日木曜日

【評判録】高山れおな句集『俳諧曾我』

【評判録】
高山れおな句集『俳諧曾我』

≫句集を持って街へ出よう?!高山れおな句集『俳諧曽我』管見:再生への旅
http://72463743.at.webry.info/201211/article_23.html

≫:俳諧師 前北かおる
http://maekitakaoru.blog100.fc2.com/blog-entry-1132.html

≫:小野裕三 関心空間
http://www.kanshin.com/diary/11500218

≫山田耕司 その知は冒険しているか:詩客 2012年12月21日
http://shiika.sakura.ne.jp/jihyo/jihyo_haiku/2012-12-21-12561.html

≫すごい句集!俳諧曾我:伊野孝行のブログ
http://www.inocchi.net/blog/2532.html

≫福田若之 幻滅とその後:週刊俳句・第295号
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2012/12/blog-post_16.html

≫相子智恵:ウラハイ 月曜日の一句
http://hw02.blogspot.jp/2012/12/blog-post_24.html

2012年12月26日水曜日

●「彼方からの手紙」第6号! & バックナンバー配信のお知らせ

「彼方からの手紙」第6号! & バックナンバー配信のお知らせ

こんにちは。山田露結です。毎度お騒がせしております「彼方からの手紙」6号配信のお知らせです。この度、ゲストにこしのゆみこさんをお迎えしました! 実は私、こしのさんのファンでありまして、今回ゲストにお迎えできたことを大変うれしく思っています。

こしのゆみこ句集『コイツァンの猫』

こしのさんの句には遠い日の家族や故郷が多く登場します。こしのさんの句を読むたびに私はたまらなく切ない気持ちになってしまうのですが、私はこれをこしのブルーと呼んでいます。これは、もしかしたら、こしのさんと私が同郷(愛知県西尾市)出身であることも少なからず影響しているのかもしれません(面識はないんですけどね)。

さて、「彼方からの手紙」です。今回のテーマは「動物」。はたしてこしのブルーがあなたを待っているのでしょうか。

ぜひお近くのコンビニで「彼方からの手紙」を受け取って下さい。あ、もちろん、私たち(山田露結と宮本佳世乃)も詠んでますよ。よろしく。

※「彼方からの手紙」は山田露結と宮本佳世乃がコンビニのマルチコピー機を利用して配信する俳句通信です。


☆「彼方からの手紙」は、お近くのセブンイレブン、またはサークルKサンクスにてお受け取り下さい。

ネットプリントの受け取り方(セブンイレブン)

1.セブンイレブンへ行く。
2.マルチコピー機の「ネットプリント」を選択して予約番号を入力する(プリント料金 60円)。
3.手順に従ってプリントを開始する。

予約番号 11866786
プリント料金 60円
配信期間 12月24日(月)~31日(月)23時59分まで
配信場所 全国のセブンイレブン

セブンイレブンネットプリント


ネットワークプリントの受け取り方(サークルKサンクス)

1.サークルKサンクスへ行く。
2.マルチコピー機の「ネットワークプリント」を選択してプリント料金 60円を投入。約款を確認し「同意する」ボタンを押す。
3.ユーザー番号を入力後、手順に従ってプリントを開始する。

ユーザー番号 Q786BZYX9G
プリント料金 60円
配信期間 12月24日(土)~1月1日(日)15時00分まで
配信場所 全国のサークルKサンクス

サークルKサンクスネットワークプリント


☆「彼方からの手紙」バックナンバー配信のお知らせ☆

「彼方からの手紙」創刊号!
予約番号 28738395

「彼方からの手紙」2号!(ゲスト:関悦史)
予約番号 71398440

「彼方からの手紙」3号!(ゲスト:御中虫)
予約番号 27RYATR7

「彼方からの手紙」4号!(ゲスト:T&lamp)
予約番号 JU25RU7E

「彼方からの手紙」5号!(ゲスト:田島健一)
予約番号 K8888FH5

※12月31日(月)まで、セブンイレブンのみでの配信です。



2012年12月25日火曜日

●メリークリスマス!

メリークリスマス!

子規のクリスマス句 by @musashinohaoto

〔archive〕2008-12-21 近恵 クリスマスは俳句でキメる!
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2008/12/blog-post_21.html

 

2012年12月24日月曜日

●月曜日の一句〔高山れおな〕 相子智恵



相子智恵







サンタ或いはサタンの裔(すゑ)、我は牡猫  高山れおな

句集『俳諧曾我』(2012.10 書肆絵と本)のうち「侯爵領」より。

たいへん話題の句集で、そこここで刺激的な批評を見る。アートブックのような、函入り・8分冊からなる本書より、クリスマスプレゼントに選ぶなら「侯爵領」から、この一句。

「侯爵領」について作者自身による「目録+開題」から引こう。〈シャルル・ペローの童話「長靴をはいた猫」に基づく連作である。(中略)なにしろ知恵と行動力に溢れた主人公の猫が素晴らしいし、見た目がよいだけで流されるまゝの粉屋の息子も好ましいし、惚れつぽい王女さまも鷹揚な王さまも悪くない

たしかにこの物語の猫は一見ずる賢そうに見えて、いちばんの(というか唯一の)知恵者であり、行動する者だ。粉屋の息子は素直というか何も考えていないし、出てくる人は皆すんなり騙されるだけで、ただドミノ倒しのように美しきオチに向かう展開は、今読むと相当ヘンで、爽快な物語である。

掲句は主人公の牡猫の登場から。この猫がサンタの末裔であるのか、サタンの末裔であるのか。それは物語を読み終わった人が考えればよいことで、当の主人公である策略家の猫が、そんなことはどうでもよく〈我は牡猫〉という力強い宣言がいい。『我輩は猫である』みたいに凛としている。

〈唐婆(カラバ)の名何処より。おわあ。王よ、この贄(にへ)を〉という句もある。この句の〈おわあ〉は、萩原朔太郎の詩「猫」へのオマージュであろうし、この「侯爵領」という題名も、髙柳重信の句集『伯爵領』へのオマージュ。そのほか、浅学の私には見逃すものばかりだが、そういう先行作品への愛情ある呼びかけが『俳諧曾我』には随所に詰まっていて(以前、私は本句集の分冊のうち「三百句拾遺」に収められた一句「蒹葭」を読んでみたが(http://weekly-haiku.blogspot.jp/2008/11/10.html)、こういう句集を読む体験は、どこに隠されているかわからないクリスマスプレゼントを探す子供にも似た楽しさを与えてくれる。

そもそも作者自身が、人の悪いサンタなのか、人の良いサタンなのか、自ら分からなくしているところがあって、ただ俳句にとっては彼の持つ「また何かを巻き起こすかもしれない」と思わせる俳諧の精神は、ちんまりと再生産(作者のようなオマージュではなく、ただの矮小再生産)に陥りがちな近頃の俳句にとっては「サンタ」であるだろう。いや、そんなことはどうでもいいのだろう。作者も〈我は牡猫〉なのだろうから。

2012年12月23日日曜日

〔今週号の表紙〕第296号 赤インク

今週号の表紙〕第296号 赤インク

西原天気




赤の色合いが各社ちがうのでわけですが、透明感があるというか、書いた下の紙がかすかに見えるような赤は、このペリカンやラミー、それからモンブランもその傾向。ぽてっと色を盛ったような正真正銘の赤のほうがいいという人もいるでしょうし、これは好みです。


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2012年12月22日土曜日

【既刊】『子規に学ぶ俳句365日』

クリスマス・プレゼントに

【既刊】週刊俳句編『子規に学ぶ俳句365日』

〔執筆〕 相子智恵 上田信治 江渡華子 神野紗希 関悦史 高柳克弘 野口る理 村田篠 山田耕司



2012年12月21日金曜日

●金曜日の川柳〔住田三鈷〕 樋口由紀子



樋口由紀子







自分より大きなものを見に通う

住田三鈷 (すみた・さんこ) 1937~1991

格言っぽい川柳である。小さなことにこだわって、くよくよしていたら、ふとこの句を思い出した。自分より大きなものとは一体何だろう。大きなものなんてまわりにいっぱいある。山だって、川だって、木だって、みんなみんな大きい。人だって私みたいに小さくない。作者は見えるものすべてに自分にない大きさを感じたのだろう。

掲句のポイントは「見に通う」だと思う。「通う」とはそこに何度も行き来することである。句に具体的な動きが出る。見て通っている間に自分自身も少しは大きくなれるかもしれないと思ったのだろう。生きていくことと同義のような気がする。

住田三鈷は大人しい熱血漢だった。〈石がもし語れば長いものがたり〉〈子も亀もじっと動かぬ洗面器〉〈父死んで母死んでふるさとはまぼろし〉

2012年12月20日木曜日

【俳誌拝読】『なんぢや』第19号(2012年11月27日)

【俳誌拝読】
『なんぢや』第19号(2012年11月27日)

季刊。榎本享発行。本文32頁。

光りたるところが水よ冬景色  藺草慶子(招待席)

雑巾に泥蜂の巣や水が澄み  榎本享

澄むほどに葡萄畑の荒びけり  川嶋一美

水引草牛膝とてたくましき  中村瑞枝

初月や明石の君のくだりへと  高畑桂

横浜の海の芥にいちやうの葉  林和輝

ゑのころや火星左で土星右  えのもとゆみ

夜雨かな葛の葉を打つ夜雨かな  井関雅吉

母のみが知る八月の我が誕辰  土岐光一

秋さびし大きシーツの真白な  鈴木不意

(西原天気・記)

2012年12月19日水曜日

●ピアノ

ピアノ

木枯やピアノの中の白兎  高野ムツオ

春遠しピアノの椅子に帽子置き  加倉井秋を

滅びつつピアノ鳴る家蟹赤し  西東三鬼

秋深しピアノに映る葉鶏頭  松本たかし

ピアノの奥に湾の広がる帰燕かな  大石雄鬼

はつ夏の空からお嫁さんのピアノ  池田澄子

ピアニスト首深く曲げ静かなふきあげ  岡野泰輔〔*


『俳コレ』(2011年12月・邑書林)より

2012年12月17日月曜日

●月曜日の一句〔榎本享〕 相子智恵



相子智恵







湖へ出て大根の切れつぱし  榎本 享

句集『おはやう』(2012.10 角川書店)より。

〈湖へ出て〉というのだから、この大根の切れ端は、湖へ注ぎ込む川を流れてきたのだろうか。それとも湖に出たのは作者で、湖岸で大根の切れ端を見たのだろうか。どちらにせよ湖と大根の出合いには意外性があり、写生句として不思議な輝きを放っている。冬の澄んだ広い湖の中に、真っ白な大根の切れ端が一点、ぽつんと清々しいのだ。

川と大根といえば、虚子の〈流れ行く大根の葉の早さかな〉を思う。写生の名句と言われる句だ。それへの意識も当然あるだろう。

作者は徹底した写生主義をとなえた波多野爽波の門。同門の岸本尚毅が選を担当している。岸本はあとがきで〈「写生」と「説明」のどこが違うのだろうか、「写生」のどこが面白いのだろうか、というような問題意識を持ってこの句集を味読して頂きたい〉と書く。また〈この句集を読むと、多くの佳句が拾えます。それぞれの句においては、宇宙の断片が断片のまま、キラキラと輝いています。それが俳句という詩に内在する一種の「思想」だと思います〉とも。

この大根の切れ端も湖も、ただそこにあって輝く宇宙の断片である。この俳句で作者に描かれなければ、それはただ消えてしまう一風景であった。そのような一風景の奇跡は、よく見れば私たちの周りに、どこにでも転がっている。

2012年12月16日日曜日

〔今週号の表紙〕第295号 凍曇り 西原天気 

今週号の表紙〕第295号 凍曇り

西原天気




俳句で「冬の空」とあった場合、そこのにある空は晴れているか曇っているか、あるいはどちらでもないか。私は「晴れている」派です。晴れていないなら、それがわかる言い方が欲しい派、です。


撮影場所:東京西郊。撮影日:2007年12月13日。




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2012年12月15日土曜日

【俳誌拝読】『蒐』第十号(2012年12月5日)

【俳誌拝読】
『蒐』第十号(2012年12月5日)

馬場龍吉発行、鈴木不意編集。本文20頁(オールカラー)。

問題のある人らしく鮭を打つ  太田うさぎ

シャンプーの壜にまたがり守宮の子  菊田一平

白菊や線香折りて音もなし  鈴木不意

中にゐて廃墟いちぢるしく月光  丹沢亜郎

鬼の子のかんらかんらと揺れどほし  馬場龍吉

(西原天気・記)



2012年12月14日金曜日

●金曜日の川柳〔福永清造〕 樋口由紀子



樋口由紀子







握手せぬほうの手までがうれしがり

福永清造 (ふくなが・せいぞう) 1906~1981

殺伐とした世の中である。このような句に出会うとほっとする。でも、そんな握手は長いことしていないなと思う。選挙中なのでよけいにそう思うのかもしれない。

誰と握手したのだろうか。握手している手の方はもっと嬉しがっている。いやいや、なによりも握手している本人が殊の外喜んでいるのが目に見えてわかる。こういう感じ方ができる人はうらやましい。もっと素直にならなくてはと思わされる一句である。

川柳は物を斜めに見るところがあり、そのような川柳の方がインパクトも強く、印象に残ることが多い。しかし、まっすぐでおおらかなのも川柳眼である。

私は福永清造本人とは一面識もなく、系列的にも接点はない。しかし、彼の名前はよく耳にする。〈かくれんぼ母はみつかるとこにいる〉〈合わす掌の中から幸せが生まれ〉。いい人だったんだ。彼を慕った川柳人が多いのが納得できる。

2012年12月12日水曜日

●Winter Days

Winter Days



animetion: Yuriy Norshteyn  ≫Wikipedia

2012年12月11日火曜日

【俳誌拝読】『夜河』

【俳誌拝読】
『夜河』第拾七號(2012年12月1日)

西原天気

月刊ペースで発行されるハガキ(変形)の俳誌。固定メンバー(燈、ことり、裕、月犬)+「客人」による俳句(御一人一句)と、対象の範囲を広くとった一句鑑賞より成る。

月光の朱肉へ深く入れる姓  客人・令

眼のあらは舌のあらはや冬鏡  月犬


2012年12月10日月曜日

●月曜日の一句〔井上康明〕 相子智恵



相子智恵







強霜の翁貌して山ひとつ  井上康明

句集『峡谷』(2012.10 角川書店)より。

寒い朝、びっしりと霜のおりた山がひとつ。強い霜に輝くその山を、まるで翁のような顔つき〈翁貌(おきながお)〉だと感じている。大胆な把握が面白い。

句集のあとがきには〈句集名は山峡に居住することに拠る〉とあるが、作者は山梨県在住。この句の背景には甲斐の峻厳な山々が思い浮かぶ。その中でもこの山は古老のような山だ。

能面に「翁」というのがあるが、「翁は能にあって能にあらず」と言われるそうである。他の能楽が一つの筋をもった演劇なのに対して「翁」の曲は祝言を述べる神聖な儀式としての性格を持つ。「翁」は天下泰平・五穀豊穣を祈る祝儀として、能が確立する以前から存在しており、そのため面も「神面」として取り扱われ、別格の扱いだそうだ。たしかに翁面を見ると微笑の中に神々しさを感じる。

福々しく神聖な翁と、霜に輝く甲斐の山の気高さとが重なってくる。

2012年12月9日日曜日

〔今週号の表紙〕第294号 イングランドの鴉 橋本直

今週号の表紙〕第294号 イングランドの鴉

橋本 直




イングランドは湖水地方のカラスたち。大きさは新宿とかにいるのよりずっと小さくてかわいらしい。鵲に近い感じです。船着き場の近くで撮影。餌を狙っているのだろうけれど、なんだかふしぎな距離感で集まっていました。


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2012年12月8日土曜日

●jam named saturdays

jam named saturdays


2012年12月7日金曜日

●金曜日の川柳〔きゅういち〕 樋口由紀子



樋口由紀子







パサパサの忍び難きが炊きあがる

きゅういち 1959~

パサパサのお米が炊きあがるならわかる。が、それならば、わざわざ一句にしないだろう。しかし、ここでは「忍び難き」だ。「忍び難き」といえば、「堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び・・・」の玉音放送(終戦の詔勅)を思い出す。そして、それは昭和の大きな事実である。

それに「パサパサ」をつけるなんて、なんということをするのだと感心した。悪意を感じる。作者は「忍び難き」にこだわっている。だから言葉を組み合すことによって探り出そうとする。言葉によって現われる空間、そこに昭和や戦争が表出し、現在が浮かび上がる。

〈皇国の野球を思う遠喇叭〉〈衛兵たち消えて蝋石ある夕空〉 「川柳カード」(創刊号 2012年刊)収録。

2012年12月6日木曜日

【俳誌拝読】俳句創作集『いわきへ』

【俳誌拝読】
俳句創作集『いわきへ』

西原天気


A5判、本文60ページ。定価1,000円。発行人、四ツ谷龍。今年7月および9月福島県いわき市の文化団体「プロジェクト傳」主催の『いわき市の文化財を学び、津波被災地を訪問するツアー』に参加した7名の俳人が句を寄せています。

ひらかれてより雷を孕む地図  鴇田智哉

灯台のまなうらへ蛇たどり着く  宮本佳世乃

漂着のもの指さして日傘より  四ツ谷龍

裏山がそのまま遺跡蜻蛉来る  相子智恵

屠られし鶏の薄目の繊月ほど  太田うさぎ

きざはしに試し吹きして祭笛  菊田一平

積む瓦礫に秋潮といふ蠢く墓  関悦史

津波被災地へ「訪問」しての句作。いわゆる被災当事者ではない者が「そこ」で何をどう詠むのかという困難な問題に対して、作家7名の向き合い方はさまざまのはずです。一冊を読み通して、その問題が少なくとも軽々しく扱われていない印象をもちました。

全体に抑制が効き、その抑制が、土地への敬意と愛情(俳句の本質的な部分ですよね)へと結びついているような気もしました。

冒頭のまえがき的な短文「いわきへ」には、「俳句に対する考えかたはさまざまな顔ぶれ」とあります。おそらくこうしたイヴェントを縁にしてしか1冊の冊子に合同し得なかったであろうメンバー。その意味でも興味深い冊子です。

なお、「本冊子の売上はすべて『プロジェクト傳』への寄付とし、いわき市の復興支援活動に役立てていただきます」とあります。

問い合わせ先 四ツ谷龍 メールアドレス loupe@big.or.jp



当該ツアーの模様については、下記の2記事を。

関悦史 この地を見よ いわきツアーのアルバム
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2012/09/blog-post_9240.html

宮本佳世乃 いわきのこと
http://hw02.blogspot.jp/2012/09/blog-post_25.html

2012年12月5日水曜日

●火事・続

火事・続


美しきサイコロほどの火事ひとつ  佐々馬骨

女待つ見知らぬ町に火事を見て  上田五千石

山火事の音の上ゆく風船あり  田川飛旅子

巻き尺を巻きもどしゐる昼の火事  柿本多映

火事跡の間取りくきやかにて雨よ  櫂未知子

馬の瞳の中の遠火事を消しに行く  西川徹郎

松の辺に火事の火の粉の来ては消ゆ  岸本尚毅

初霜や火事跡といふ黒きもの  鷹羽狩行

椿散るああなまぬるき昼の火事  富澤赤黄男




2012年12月4日火曜日

●おとうと

おとうと

摩天楼 日に総玻璃の、おとうとよ  高山れおな〔*〕

浜木綿へ兄は流れて弟も  中村苑子

おとうとを野原の郵便局へ届ける  西川徹郎

弟はまだ優曇華の映画館  高野ムツオ

ランボーは遠いおとうと目刺で酒  原子公平

弟へ真白き花の打球かな  攝津幸彦


〔*〕高山れおな句集『俳諧曾我』「1 俳諧曾我」より

2012年12月3日月曜日

●月曜日の一句〔有馬朗人〕 相子智恵



相子智恵







匙回し彼の世を透かす葛湯かな  有馬朗人

句集『流轉』(2012.11 角川書店)より。

匙でかき混ぜて葛湯を作っている。かき混ぜるほどに透明に近づいてゆく葛湯。ただ、どこまでいっても透明にはなりきらない、そのうすぼんやりとした半透明の葛湯の光の奥に〈彼の世を透か〉して見ているというのは、たいそう美しく、幽玄である。

久保田万太郎の〈湯豆腐やいのちのはてのうすあかり〉にも似て、〈葛湯〉というありふれた食べ物の奥に、茫漠とした世界が広がっている。日常の一風景が、一気に日常から離れた詩に転じていくのは、俳句の面白さのひとつだ。

〈彼の世〉の読み方は二通りあるが、ここでは前田普羅の〈奥白根彼の世の雪をかゞやかす〉と同じく「かのよ」と読むほうが音韻がいいので、私はそう読みたいと思う。

2012年12月2日日曜日

〔今週号の表紙〕第293号 夜 西原天気

今週号の表紙〕第293号 夜

西原天気




カラーで撮った写真をわざわざモノクロにしてみました。それでどうという話ではなく。

撮影場所は北海道のどこか。撮影日時は2010年11月4日21時13分。


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2012年12月1日土曜日

●Cold Cold Winter

Cold Cold Winter