2013年1月21日月曜日

●月曜日の一句〔宮本佳世乃〕 相子智恵

 
相子智恵







はつ雪や紙をさはつたまま眠る  宮本佳世乃

句集『鳥飛ぶ仕組み』(2012.12 現代俳句協会)より。

初雪と紙はどちらも清らかな白でありながら、その白さも、触ったときの質感や温度もまったく違う。似ていて遠いふたつの清浄な白さが頭の中で重なり、ふわーっと頭が真っ白になっていって、いつの間にか眠りに落ちる。鋭敏な感覚の取り合わせだ。

〈はつ雪〉〈さはつた〉の平仮名のやわらかさからも、A音の響きからも、懐かしさと少しの淋しさを感じる。

紙は(眠る前に読んでいた本の栞かもしれない)など現実的な想像ができる補助線は引かれているが、そんな野暮な背景は一切取り除かれ、イメージの清らかさ・安らかさだけで一句は構成される。

こうした直感的な取り合わせで生み出される世界には、作者のもつ感性がよく表われると思う。派手な離れ業の取り合わせが好きな人、一見遠い取り合わせだがじつは論理構築ができている人、映像的な人、言葉的な人、複雑骨折のような取り合わせで煙に巻いてしまう人……一冊を読んでいくとその人の志向する世界観が見えてきて面白い。

本書はそうした直感的な取り合わせで一句が詠まれる場合が多いが〈若葉風らららバランス飲料水〉〈鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに〉〈消しゴムの小さく割れて夕焼くる〉など、その感性はやわらかく、空から降る透明な光のようにキラキラとした世界がある。そして不意に、自分の頭上がただぽっかりと空であることの心細さに改めて気づいたときのような淋しさが、うっすらとある。
 

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