2013年5月10日金曜日

●金曜日の川柳〔阪井久良岐〕樋口由紀子



樋口由紀子







午後三時永田町から花が降り

阪井久良岐 (さかい・くらき) 1869~1945

「永田町」と言えば国会議事堂・首相官邸があり、政界を考えてしまう。しかし、この「永田町」は当時永田町にあった華族女学校をさす。午後三時に華族の令嬢たちがお迎えの車に乗って、それこそ華やかに下校する有り様を「花が降り」と詠んだのだ。「花といえば美人という聯想がうかんでくるのは申すまでもない」と自解している。

阪井久良岐は井上剣花坊と共に川柳中興の祖と言われている。狂句の全盛時代に都市の風俗詩としての原型である古川柳にかえれと提唱し、狂句を脱した新川柳にとっての最初の組織づくりをした。

しかし、古川柳を江戸の風俗詩とする考え方をもって、新川柳を東京の風俗詩とし、その美学から出ることはなかった。〈大道で唐本を売る九段下〉〈玉川へ来て廣重の波の色〉

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