2013年9月27日金曜日

●金曜日の川柳〔佐藤岳俊〕樋口由紀子



樋口由紀子






ふるさとを掘ると一揆につきあたる

佐藤岳俊 (さとう・がくしゅん) 1945~

近年、社会性川柳を書く人が少なくなっている。今の世の中は決して平穏であるとはいえない。それよりもきな臭い方向に進んでいるように思う。危機意識を持っている人は多く、書く材料には事欠かないはずである。

岳俊は岩手県で生まれ、育ち、現在も岩手県に住んでいる。彼は若い頃より社会性川柳にこだわる数少ない川柳人である。東北の風土性に密接に関係したものが多い。それも一貫して労働者、農民などの弱者の視点で書いている。

「一揆」という実際に起こったものが句の支柱になっている。フィクションではなく、ノンフィクションとして。圧政で我慢の限界を越えた農民が死を覚悟して、戦った。その上に今の自分たちは生き、今の生活がある。彼は一揆を起こした農民の辛苦を忘れてはいけないと思っている。

〈うつぶせのまま出稼ぎの棺がかえる〉〈赤字線折ればごくごく血を吐ける〉〈野仏に祈る名もない人ばかり〉

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