2013年9月9日月曜日

●月曜日の一句〔柿本多映〕相子智恵

 
相子智恵







寂しさも塩気なりけり天の川  柿本多映

句集『仮生』(2013.9 現代俳句協会)より。

〈塩気〉とは、たとえば料理では、それがなくては味が締まらない、重要な味付けである。そう考えると〈寂しさ〉も、人生にとっては〈塩気〉のように、それがないと味が締まらないものかもなのかもしれないな、と思った。

だとすれば「塩加減」も大事で、薄味すぎては味気ないし、塩気が効きすぎて辛すぎるのも、どちらも人生を美味しくしないだろう。

そこに取り合わせの〈天の川〉が不思議な味わいを醸し出している。〈天の川〉は、その星々の輝きから気分を明るくする方向に働いているような気もするし、逆にしみじみと深い寂しさを効かせているような気もする。取り合わせる季語によっては「人生訓」のような臭みも出てしまいそうな上五・中七のフレーズを、〈天の川〉という人知の及ばない大きな季語が救っているのだ。

〈塩気〉からは「涙」も連想させるが、抽象度を上げていくことで、さまざまな想像が膨らむ句となっている。

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