2014年2月24日月曜日

●月曜日の一句〔瀬戸正洋〕相子智恵

 
相子智恵







薄氷のうへの言霊転びけり  瀬戸正洋

句文集『俳句と雑文 B』(2014.1 邑書林)より。

〈薄氷〉は儚く消えるものであり、その上に〈言霊〉があるというと、言葉に宿る霊力も、とても繊細なものに思えてくる。だが〈転びけり〉まで読み下すと、それが一気に諧謔に転じて批評性を帯びる。薄氷の上で言葉の霊力が、つるんと転んでいる。「薄氷を踏む」という慣用句もあるだけに「言霊の危うさ」のようなことを暗に伝えているのかもしれない。ただ、意味を風刺的な方向に捉えすぎると、なんだか少し、この句はつまらなくなってしまう気がする。

小さな小さな言葉の霊が、薄い春の氷の上で転んだ。その不思議な情景が、妙にほほえましく頭に浮かんで消える。すぐに消えて水になる薄氷のように。

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