2014年4月28日月曜日

●月曜日の一句〔岸本尚毅〕相子智恵



相子智恵







鳥の眼のときに神の眼花辛夷  岸本尚毅

句集『小』(2014.3 角川学芸出版)より。

鳥類の眼は鋭い。もちろん黒目がちの可愛らしい鳥もいるが、にわとりの眼でも鷹の眼でも、黄金に黒のコントラストが畏怖を感じさせる。しかも、瞼が下から閉じるのもなんだか怖いと思っていた。その鋭さを〈ときに神の眼〉と言われれば、なるほど、と思う。

そして〈鳥の眼〉からは「鳥瞰」ということを思うから、高所からの視点は神につながる。空へ夥しく白い花を捧げるように咲く〈花辛夷〉が清らかで、でもその花の数はどこか胸苦しくもあり、この取り合わせが、うまく説明はできないが響き合っていると思った。

岸本の句の取り合わせには不思議な佳さがあって、たとえば今時分の句で言えば、〈鈴光る猫は幸せ夕桜〉や、〈柏餅雨の降る日の白さあり〉〈芽柳や頬杖やがて肘枕〉〈薔薇咲いて我は鯖食ふ男かな〉など、さりげなさと意外性のどちらもあるのに、取り合わせられればその句に相応しい。小さくまとまりすぎることも、逆に破綻することもなく、一句にふわりとした膨らみができるのである。

一物の句のほうがどちらかといえば多い作者かもしれないが、この取り合わせの気持ちのよさが、私は好きである。

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