2014年5月19日月曜日

●月曜日の一句〔石嶌岳〕相子智恵



相子智恵







観音もマリアも腕ほそき夏  石嶌 岳

合同句集『搭』第九集「雪の音」(2013.12 梅里書房)より。

観音の性別は本来男性であったと考えられているが、後に「慈母観音」などの信仰から女性と見る向きが増え、そのうち性別は無いものとして捉えられたようだ。女性らしい細い体つきと、柔和な表情の印象は誰もが持つところである。だから観音とマリアの腕の細さを並べられて、すっと腑に落ちるところがあった。両者の細く白い腕には涼しさがあり、すべてを受け入れる優しさがある。

投げ込むように取り合わせた〈夏〉という暑くて意気盛んな季節を、すっと受け止める涼しい腕。一見、その頼りない細さは夏負けしそうだが、猛者のような季節をしなやかに包み込むのだろう。一瞬の涼しさを感じる句だ。

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