2014年10月6日月曜日

●月曜日の一句〔兼城雄〕相子智恵



相子智恵







言葉待つ耳こそばゆし花芒  兼城 雄

「27歳」(俳句ウェブマガジン「スピカ」/2014.9.9更新)より

普段、ただ漫然と言葉を聞いているときには耳を意識しないから、次の言葉を集中して待っているという、無言の時間がやや長く続いている様子が想像される。大切な言葉を早く聞きたいような、聞きたくないような、くすぐったく、じれったい時間。

この耳はいったいどんな言葉を待っているのだろう。辺り一面銀色のキラキラとした〈花芒〉が風になびく中で、耳が待っている言葉への期待感が〈こそばゆし〉に表れていて、この句自体がキラキラとした青春の甘さと切なさを感じさせる。

思い自体を吐露してしまうのではなく、耳がくすぐったいという状態と季語に託して淡々と抑えたことで、かえって印象的な青春詠となった。

0 件のコメント: