2014年11月7日金曜日

●金曜日の川柳〔徳山泰子〕樋口由紀子



樋口由紀子






無理やりに割り込むおばちゃんがいて満月

徳山泰子 (とくやま・やすこ) 1948~

やっと前の席が空きそう。今日は仕事で疲れていたので立っているのがしんどい。前に座っている人が次の駅で降りてほしいとずっと願っていた。やっと座れる。がーん、おばちゃんが割り込んできた。わあっ~最悪。でも、しかたない。あきらめて、おばちゃんの頭越しに窓の外を見たら、満月。今日は満月だったのか。なんか、得をした気分。満月って、ほんとにかっこいい。

割り込んでくるおばちゃんがいるのもこの世、満月が見えるのもこの世。満月も現実だけれど、どこか現実離れしている。何事が起こっても、何事もなかったように、悠々として満月はある。生きていくには満月のようにはなかなかいかない。でも、満月を見ていると、心が落ち着く。おばちゃんも疲れていたのだ。そういえば、おばちゃんのお尻も満月もまんまる。さあ、早く家に帰ってお風呂に入ろう。「浪速の芭蕉祭」(2014年刊 鷽の会)収録。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

今夜は閏9月の十五夜とか。
この時にこの1句とは。
なかなか素敵なタイミングですね。