2014年12月12日金曜日

●金曜日の川柳〔星野光一〕樋口由紀子



樋口由紀子






今日も銀座の一角に佇ち、開けゴマ

星野光一 (ほしの・こういち) 1927~

アラビアン・ナイトのアリ・ババと40人の盗賊が「開けゴマ」と唱えると盗んだ宝物が隠されて洞窟が開く。魔法の言葉である。

笑ってしまった。掲句を読んで、ユニークでわざととぼけた行動をする、こんな人は必ず存在すると思った。夢とユーモアがあって、いいなあ、こんな人。寂寥感も含んでいる。

場所設定が絶妙だ。クリスマス前の銀座はさぞ華やかに賑わっているだろうと地方に住んでいて思う。かっての銀座は江戸幕府直轄の銀貨の鋳造・発行所であったところ。その一角に佇って、唱える。「佇つ」だから、しばらくその場に立ち止まってだろう。もちろん、扉が開いてお宝が出てくることはまずない。でも、でも、ひょっとしたらなにかが起こるかもしれない。だから、「今日も」なのだろう。

〈雪だるまに そら恐ろしき目を与う〉〈朝 昼 夜 豚に雌雄のある限り〉 『川柳新書』(昭和31年刊)所収。

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