2015年10月16日金曜日

●金曜日の川柳〔堀小美苑〕樋口由紀子



樋口由紀子






下駄箱は靴靴靴で下駄は無し

堀小美苑

今はもうシューズボックスというのが一般的だろう。たぶんほとんどの家の下駄箱は靴ばかりで、めったに下駄は入っていない。しかし、「下駄箱」という言葉は依然として残っている。「下駄を預ける」「下駄をはかせる」なども今はどの程度理解されているのだろうか。

掲句の凄さは「靴靴靴」と視覚的表現をしたところにある。靴を三つも並べたおおげささに諧謔を感じる。昭和39年の川柳二七会で岸本水府が「靴」で抜いた(選んだ)一句である。「靴靴靴」という詠み方は当時としてはかなり珍しかったはずである。それをいち早く読み取っている。水府は立派な句を数多く残した川柳人だが、選者としてもたけていたのだとあらためて思う。

川柳二七会は昭和34年に発足した、「番傘」の兄弟会で、水府は初代会長。当時は会員に芸人や実業家が多く異色の川柳会で、現在も続いている。「二七誌」(1964年刊)収録。

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