2016年1月11日月曜日

●月曜日の一句〔日原正彦〕相子智恵



相子智恵






てんてまりつけばひだまりひろがりぬ  日原正彦

句集『てんてまり』(2015.12 ふたば工房)より

句から「唄」が聴こえてくるようである。それは全体を平仮名にして、内容よりも調べを強調したことと、「り」というなめらかな音や「ひ」という温かみのある音の繰り返しが効いていること。そして手毬という季語を〈てんてまり〉としたことで、「てんてんてんまり てん手まり」で始まる「鞠と殿さま」という曲も思い出すことによる。これは久保田万太郎の〈竹馬やいろはにほへとちりぢりに〉と同じような効果と言えるだろう。正月の子どもの遊びの句として、調べからも懐かしさを感じさせていて心地よい。

次に内容である。「手毬をつけば日溜りが広がる」という感覚があたたかい。子どもが丸い球を落としたところから水の波紋が広がるように、日溜りの輪が広がっていくような気がしたのだろう。実際に穏やかな天気の正月であることもわかる。

調べ・内容ともによく練られた、正月らしさのある一句である。

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