2016年4月8日金曜日

●金曜日の川柳〔森東魚〕樋口由紀子



樋口由紀子






雨滴の音が宇宙へつっ走り

森東魚 (もり・とうぎょ) 1889~1945

雨が続くとうっとうしくなり、心は晴れない。しかし、作者は雨滴の音に独自の見方をした。雨滴の音は聞く人の心境によってはいかようにも聞こえる。しかし、宇宙と関係づけることはそんなにない。どんな心持ちでそのように感じたのだろうか。

「つっ走り」とは鋭い表現である。力を感じさせ、ぐっと魅かれた。つっ走っていくのは自分の心中である。それはまぎれもなく「つっ走り」の感情が作者の内に持っていたからである。かなしさなのか、どうすることもできない心のありようなのか。抒情性のある心象表白である。夢に向かって、あるいは誰かのもとに、限りある人生を「つっ走り」たい。それは誰にも止めようがない。

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