2016年9月23日金曜日

●金曜日の川柳〔飯田良祐〕樋口由紀子



樋口由紀子






二又ソケットに父の永住権

飯田良祐 (いいだ・りょうすけ) 1943~2006

「二又ソケット」は電気の供給口を二又にして電灯と電化製品を両方同時に使用できるようにしたもので、子どもの頃に家庭で使っていたことを覚えている。便利だったが無理矢理感が半端ではなく、見た目はへんなものであった。その不自然なかたちのまわりには生真面目さと貧しさと可笑しみと哀しさが漂っていた。

「永住権」とはこみいっている。良祐には〈二輪車の父は鮪になっていく〉〈二等辺三角形な父の脳〉〈銅板の父とも知らず二等席〉など「父」と「二」を組み合わせた川柳がいくつもある。彼の父に対する複雑で屈折した心情を垣間見ることができる。

二又ソケットに永住権のある父、その父の子である私。「私」とは一体なにだろうか。その父は「私」ではないだろうかと問いかけているように思う。『実朝の首』(川柳カード叢書② 2015年刊)所収。


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