2016年10月28日金曜日

●金曜日の川柳〔岩田多佳子〕樋口由紀子



樋口由紀子






アフリカのもしもが燃えている箪笥

岩田多佳子(いわた・たかこ)

「アフリカのもしも」って、なんだ?それが「燃えている」。それも「箪笥」で。一般的な意味では解釈できない。けれども、「アフリカ」「もしも」「燃えている」「箪笥」の言葉のつながりになにかありそうな気がする。「箪笥」には何かを仕舞う。本来箪笥には入れないものも入っている。それは恋文・現金・秘密だったりする。「箪笥」のある一面を捉えているのかもしれない。

ふと、天狗俳諧のようだと思った。天狗俳諧は上五字・中七字・下五字を各自がそれぞれ無関係に作り、それを無作為に組み合わせて一句にするものだが、出来上がった句はそれなりに読めておもしろく、意外に句意が通ったりすることもある。あるいは句意が通じなくても、何かを感じさせるものができ上がる。

〈喉の奥から父方の鹿 顔を出す〉〈いちにちの広さコンニャクひとつ分〉〈ステンレスの集中力に触れている〉 『ステンレスの木』(2016年刊 あざみエージェント)所収。

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