2016年12月5日月曜日

●月曜日の一句〔杉山文子〕相子智恵



相子智恵






運命と片付けられてちやんちやんこ  杉山文子

句集『百年のキリム』(2016.10 金雀枝舎)より

〈運命〉という言葉はずいぶん重いように見えながら、とても都合の良い「思考停止ワード」なのだということに、掲句を読んで気づいた。

運命と片付けられてしまった人は、何か重い話をしたのだろう。〈片付けられて〉という言葉に表れている怒りや諦めは、それを打ち明けるのにとても勇気がいったのだという心情も見せてくれる。
その話を聞いた相手は「仕方ないね、それが運命だったんだよ」と励ましたのだろう。きっと、相手もそうとしか励ましようがない話だったのだ。そういう話、たしかにある。

受け止めきれない大きなことを「運命」という言葉でパッケージして受け流すのは生きていく知恵だろうし、思考を停止しないと生きていけない場面はある。

「ちゃんちゃんこ」という、庶民的な生活を感じさせるアイテムによって、それは誰にでも起こることなのだということが伝わる。この句に見られる「打ち明けた本人と聞いた相手の温度差」というのもよく起こることだ。よくあることだが、俳句にされたことで顕在化したのだ。

〈励まして寂しくなりぬつくしんぼ〉という句もあった。これも他者との関係の中にある温度差をうまく伝えている。

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