2017年5月26日金曜日

●金曜日の川柳〔柏原幻四郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






人を焼く炉に番号が打ってある

柏原幻四郎 (かしはら・げんしろう) 1933~2013

言われてみて、はっとした。確かに火葬場の炉には生前の名前ではなく、番号が表示されている。何番のところに来てくださいと係りの人は言う。「炉に番号が打ってある」というだけで、とやかくは言ってないが、人と番号の見えなかった関係性を気付かせる。物を入れるコインロッカーのようである。しかし、そこには死んだとはいえ、人がいる。

柏原はよみうり時事川柳の選者で、「川柳瓦版の会」の代表であった。共通番号(マイナンバー)制度を政府は導入した。国民一人一人に12桁の番号が与えられ、ついに生きているうちにも番号が付けられてしまった。行政の効率化、国民の利便性の向上のためだというが、人はますます管理され、モノ扱いされる。共謀罪法案が衆議院を通過した。このような現状を柏原ならどう詠むだろうか、私も声をあげなくてはと思う。〈われもまた中流なれば貧しきよ〉〈人の世の重い電話が不意に鳴る〉〈霊柩車の屋根に此の世の雨が降る〉〈銭の音 人はやさしい顔にする〉

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