2017年7月7日金曜日

●金曜日の川柳〔高田寄生木〕樋口由紀子



樋口由紀子






しあわせをのせる がらすのぴんせっと

高田寄生木 (たかだ・やどりぎ) 1933~

生きていて、「しあわせ」と感じるのはそうたびたびあるわけではない。たまに「しあわせ」と思うときがあるから、そうではないときもなんとか遣り過ごしていける。めったにやってこない「しあわせ」だから、ありがたさも格別になる。

まれにくる「しあわせ」を「がらすのぴんせっと」でつまんでなにかにのせるのだろうか。それとも「がらすのぴんせっと」にのせるのだろうか。どちらにしても小さく、壊れやすい。そうっとそうっと大切に扱う。「しあわせ」の接し方で「しあわせ」をいかに受け止めているのかが伝わってくる。ひらがな表記のやわらかさで、「しあわせ」も「がらすのぴんせっと」もきらきら光る。

〈くちびるのゆきのあたたかさをのせる〉〈山頂に風あり人を信じます〉〈あいつはもう死んだかな防波堤の右は北〉 『東奥文芸叢書 北の炎』(2014年刊)所収。

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