2017年10月20日金曜日

●金曜日の川柳〔高橋蘭 〕樋口由紀子



樋口由紀子






十年先の花簪も面白い

高橋蘭 (たかはし・らん) 1934~

「花簪」、キク科の一年草にそんな名前のかわいい花がある。よくドライフラワーにする。しかし、この「花簪」は髪飾りだと思う。小さな布を花の形につまんで作るかんざしである。舞妓さんの簪や七五三の髪飾りに使われている。

「面白い」はいろいろと含みのある言葉である。十年先が見ものであると面白がっている。変色したり、形が崩れたり、見るに堪えないものになっているのか、あるいは十年先も同じ美しさを保っているのか。扱われ方が一変しているかもしれない。

「花簪も」だから、私も歳はとるが面白いぞと言っている。あるいは「花簪」はあっても、私はもう存在していないかもしれない。さて、どうなっているのか。図太い川柳である。〈棒読みの台詞も十月十日まで〉〈どうだっていいけど息をしてしまう〉〈ぶち切った鎖に生える月夜茸〉 「ふらすこてん」(2017年刊)収録。

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