2017年11月12日日曜日

【俳誌拝読】『現代俳句』2017年11月号 西原天気

【俳誌拝読】
『現代俳句』2017年11月号

西原天気


現代俳句協会『現代俳句』2017年11月号に「現代俳句新人賞」受賞作2篇(赤羽根めぐみ「おりてくる」、宮本佳世乃「ぽつねんと」)、佳作2篇(吉川千早「らうたし」、仲田陽子「雨の来る匂い」)が掲載されています。それぞれ1句ずつ紹介します。


味噌汁の味噌の重力秋に入る  赤羽根めぐみ

たしかに味噌が下に降ります。それを「重力」と大仰に言い切った可笑しみ。

「秋に入る」という言い方に、私自身は違和感を覚えないこともない。秋って、「入る」感じがしない。春も夏も同様。なぜか冬だけは「入る」感じがある。私だけの感じ方かもしれず、道理はわかりません。一方、「秋に入る」といういかにも俳句的・季語的な語と前半が相俟ってこその飄々とした味わい、という気もします。


ふくろふのまんなかに木の虚のある  宮本佳世乃

木々のなかにいるはずの梟。大きさや位置関係の逆転がこの句の主眼。梟を複数に読むと、ふつうの景色になりますが、一羽と読みました。だからこそ起こる逆転。

この「虚」には説得力があります。なんだかありそうじゃないですか、梟の腹のあたりに木の虚が。色合い的にもね。
 
語尾の「ある」はその人の口吻というものでしょう。「あり」ときっぱり終わると、いわゆる「ドヤ感」が出るのを嫌ったのかもしれません。


君の来た星には花があるんだぜ  吉川千早

いっけん地球外からやってきた宇宙人に語りかけたように見えますが、連作「らうたし」は「子」を詠んだ連作、それならば、生まれてきたことを、この星にやってきたと捉えていると読むのが順当でしょう。どちらにしても、ジュヴナイルのような味わい。若々しくスウィート。

この「花」は俳句の約束事=桜ではなく、花一般でしょう。無季ということになりますが、有季でも無季でも、私はどちらでもオッケー。


ゴールデンウィーク集荷の人を待ち  仲田陽子

一般家庭が宅配便を出すとき、どのくらいの頻度で集荷サービスを利用するのか、よくわからないが、商売をしていると、日常的に集荷してもらうことが多いだろう。

一般家庭か仕事場かで、句の印象が異なるが、後者の場合、世間が休んでいるとき、納品なり進行のために集荷を待っている。句としては何気ないが、ある種、気分のしっかりした醸成、時間の質感の提示がある。

集中、《水辺から昏れる一日青ぶどう》といったポエティックな句の一方、掲句や《フラダンス奉納のあと海開き》といった措辞・文彩を排した日常・非日常の句もいくつか。こちらのタイプの句により惹かれた。


現代俳句協会ウェブサイト

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