2018年1月12日金曜日

●金曜日の川柳〔井上一筒〕樋口由紀子



樋口由紀子






吠えていたドーベルマンは捨てられた

井上一筒 (いのうえ・いいとん) 1939~

見事な木版画の年賀状の一句。おだやかで、可愛らしい犬の句がほとんどの年賀状の中で異彩を放っていた。ドーベルマンは「犬のサラブレッド」とも呼ばれ、非常に頭の良い犬である。また、飼い主に対しては非常に従順で、強い忠誠心と忍耐力を持っている。そのドーベルマンが吠えていたのだから、余程のことがあったのだろう。吠えていたのであって噛みついて怪我をさせたのではない。捨てられたのであって殺されたのでないことが救いである。そんなことを思った。ドーベルマンに犬の矜持を見たように思う。

ドーベルマンは作者自身のことを詠んだのだろう。けれども、井上一筒は時事川柳の結社「川柳瓦版の会」の会長で、よみうり時事川柳(大阪本社版)の選者であるせいかもしれないが、今なお勾留され続けている森友学園の籠池氏のことが思い浮んだ。


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